Shining Rhapsody 〜神に転生した料理人〜

橘 霞月

転生〜統治(仮題)

第1話 転生?

…忙しい。


早朝の仕込みから閉店まで、そして新メニューの開発。

毎日毎日寝る暇の無い生活。


商売繁盛なのは結構な事。有難いとは思う。

若い頃は金が欲しかったのだから、今の自分は本当に恵まれている。


それ故に思う。


『休みが欲しい』


某三つ星ホテルの総料理長。パティシエとしても有名になった。

このホテルをここまでにしたのは、俺の功績だと言われている。

色々な人から引き抜きの話が来る。もちろん独立も考えた。


だが、考えた瞬間に諦めた。当然だろう。他人に仕込みを任せられなくて

寝る間を惜しんでいるのだから、独立しても変わらない。変わるわけがない。


従業員も沢山いる。弟子みたいに可愛がっているヤツもいる。

だがしかし、弟子ではない。可愛がっているが、弟子であってはならない。

こんな事を言っていたお客様がいた。


『ダメな子ほど可愛い』と。


若い頃は理解出来なかったが、歳をとって納得した。

放っておけないのだ。


結婚して息子でもいれば、こんな気持ちなんだろうなと常々考える。

『コイツがいなかったらもっと楽なんじゃないか?』なんて思う日もある。


でもまぁ、人生なんて、不満がある方がいいと思う。満足してしまったら、

そこで終わるのが俺という人間なのだから。


帰宅途中にそんな事を考えながら歩いていたからなのか、日頃の運動不足からなのか。目の前にトラックが迫っていたのに気付かなかった。

気付いてから逃げようと思ったが、地面が光り輝いていて動けない。


『俺が欲しいのは、こういう休みじゃないんだけどな…』


最初に感じたのは、誰かに抱きかかえられているような感触だった。


「■■■■■■■」


誰かが何かを言っているが、聞いた事の無い言葉だった。

『ガイジンさんに助けられちゃったのか?』なんて思ったが、目が開けられない。

体も上手く動かせない。とりあえず返事だけでもしないと…。


「あー、あー」


『へ?喋れないんですけど…』


まるで自分の体じゃないみたいな感覚だった。当然だよな、トラックに轢かれたんだから。


「■■■■■■■」


『何言ってるか判らねぇよ…。どうしよう?……とりあえず寝るか!』

こうして思考を放棄し、深い眠りについたのだった。

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