第204話 思ってたんと違う

 イヌノフグリの集落しゅうらくで生き残ったのは、狩りが出来ない弱い猫たちばかり。


 このままでは、イヌノフグリの集落しゅうらくの猫たちは、全員死んでしまう。


 そこでぼくたちは、イヌノフグリの集落しゅうらくの猫たちを全員引き連れて、イチモツの集落しゅうらくへ戻ることにした。


 おっと、グレイさんにも、このことを伝えておかなくちゃ。


「ミャ?」


 お父さん、お母さん、みんなを連れて、先に行っといてくれる?


 ぼくは、グレイさんをおむかえに行ってくるね。


「任せてニャー」


「では皆さん、私達のあとをついて来て下さいニャ」


 お父さんとお母さんが先導せんどうして、猫たちがゾロゾロとついて行く。


 ケガが痛むからゆっくりだけど、みんな自分の足で歩けるみたいで良かった。


 途中とちゅうで川にって水を飲んだり、トイレ休憩きゅうけいはさんだりしても、イチモツの集落しゅうらくまで、そんなに時間は掛からないはず。


 このペースでいけば、日没にちぼつまでには、辿たどくだろう。




 ぼくはひとりはなれて、グレイさんが見張みはりをしている場所へ向かった。


 グレイさんは、イヌノフグリの集落しゅうらくから少しはなれた、小高こだかい丘の上に座っていた。


 ぼくが近付いて行くと、グレイさんはいきおい良く立ち上がり、うれしそうな笑顔を浮かべて、しっぽを振り出す。


『シロちゃん、オレに会いに来てくれたのか? この集落しゅうらくおそおうとする動物は、今のところ近付いて来ていないぞ。そっちは、大丈夫か?』

 

「それが……この集落しゅうらくの猫たちはたくさんくなって、生き残った猫たちもとても弱っているミャ。だから、ぼくたちの集落しゅうらくへお引っ越しさせることになったミャ」


『なるほど。お父さんとお母さんが、たくさんの猫たちを連れて集落しゅうらくを出て行ったのは、そういうことだったのか』


「グレイさん、知っているミャ?」


『ああ、ここからは集落しゅうらくの様子が良く見えるからな。シロちゃんが頑張がんばっているところも、ずっと見ていたぞ』


 グレイさんはニッコリと笑った後、首をかしげて聞いてくる。


『それで、シロちゃんはどうするんだ?』


「ぼくは、急いでイチモツの集落しゅうらくへ戻って、茶トラ先生にこのことを伝えなくちゃいけないミャ」


『だったら、オレがシロちゃんを運んであげよう。オレは走るのが、得意だからな。オレの足ならすぐ、シロちゃんの集落しゅうらくくぞ』


「ホント? じゃあ、お願いするミャ」


『よし、落ちないように良い子にしているのだぞ』


 ぼく、大きな犬の背中に乗るの、夢だったんだよね。


 そんなことを考えながら、グレイさんに乗ろうとしたら、首根くびねっこをくわえられた。


「ミャ?」


 グレイさんは、ぼくをくわえたまま、軽快けいかいに走り出す。


 あれ? ぼくこれ、トマークトゥスに連れ去られているように見えない?

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