第321話 シロツメクサの集落の場合

 グレイさんが、ぼくの首根くびねっこくわえて走ってくれた。


 おかげでかなり早く、シロツメクサの集落しゅうらく辿たどけた。


 シロツメクサの集落しゅうらくという名前は、ぼくが勝手かってに呼んでいるだけ。


 前に来た時は、集落しゅうらくの名前を聞き忘れちゃったんだよね。


 今度こそ、忘れずに聞いておこう。


 このあたりは平地へいちだから、洪水こうずい被害ひがいったようだ。


 洪水こうずいから、1ヶ月以上っているから、どろかわき切っている。


 だけどあきらかに、土や草木くさきが流されたあとが残っていた。


 シロツメクサの集落しゅうらくの猫たちは、無事だろうか。


 集落しゅうらくより少し手前てまえで、グレイさんと別れた。



 集落しゅうらく内では、猫たちがのんびりと過ごしていた。


 あれ? 洪水こうずい被害ひがいを受けたはずなのに、平和そう。


 そういえば、この集落しゅうらくでは雨がり出したら、大きな岸壁がんぺきられた横穴よこあな避難ひなんする決まりになっていたっけ。


 きっと、猫たちは全員、横穴よこあな避難ひなんして無事ぶじだったんだ。


 ぼくたちに気が付いた1匹の猫が、話し掛けてくる。


「あっ、あなたたちはっ! お医者さんたちじゃないですなぉっ?」


「ミャ」


 どうも、お久しりです。 


 あれから皆さん、いかがおごしですか?


「それが、この間の大雨おおあめで、集落しゅうらく水浸みずびたしになりましてなぉ」


「ミャ」


 それは、大変でしたね。


 集落しゅうらくの猫たちは、皆さんご無事でしたか?


横穴よこあなに逃げ込んだので、集落しゅうらくの猫たちは全員無事ですなぉ」


 それを聞いて、安心した。


 しばらく話していると、他の猫たちも集まって来た。


 猫たちは、「また来てくれてうれしいニャー」と、歓迎かんげいしてくれた。


 この集落しゅうらくおさであるトビキジもやって来て、笑顔でぼくたちに握手あくしゅもとめてくる。


「お医者さんがた、またいらして下さって、ありがとうございますにゃん」


「ミャ」


 トビキジさんも、集落しゅうらくの皆さんも、お元気そうで何よりです。


「出来れば、もう少し早く来て欲しかったですにゃん……」


 トビキジは、深いため息を吐いて、話し始める。


 トビキジの話によると、集落しゅうらく大雨おおあめで水にしずんだ。


 猫たちは全員、横穴よこあな避難ひなんしたので無事だった。


 しかし、洪水こうずいで、横穴よこあなから出られなくなってしまった。


 水が引くまで、飲まず食わずで、ただ待つしかなかった。


 水が引いて、ようやく外へ出られたと思ったら、病気が流行はやり始めた。


 ぼくがさっするに、細菌感染症さいきんかんせんしょうだと思う。


 トビキジは大急ぎでヨモギを探して、病気の猫たちに食べさせた。


 ヨモギを食べさせ続けると、猫たちは少しずつ回復していった。


走査そうさ』が反応しなかったのは、もうすでになおっていたからか。


 ぼくが教えた薬草で、猫たちが助かって良かった。


 ヨモギは、叩きつぶさないと薬にならないと思っていたけど。


 そのまま食べても、大丈夫なのかな?


『ヨモギは、食物繊維しょくもつせんい豊富ほうふな為、そのまま食べると消化不良しょうかふりょうを起こす可能性が高い。繊維せんいを叩きつぶすことにより、消化吸収しょうかきゅうしゅうしやすくなる。用法ようほう用量ようりょうを正しく守って、服用する飲ませること』


 やっぱり、そのまま食べさせちゃダメなのか。

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