第212話 生きる力

 グレイさんに運んでもらって、集落しゅうらくの前でろしてもらった。


「グレイさんは、ここで待っててミャ。ぼくが、集落しゅうらく様子ようすを見て来るミャ」


『分かった。オレはここで、見張みはりをしておこう。オレに出来ることがあったら、いつでも声を掛けてくれ』


「グレイさん、いつも見張みはりをしてくれて、助かるミャ。じゃあ、行って来ますミャ」


『ああ、いってらっしゃい。気を付けてな』


 グレイさんとわかれて、ぼくはひとりで集落しゅうらくへ入った。


 集落しゅうらくには思った通り、せきやくしゃみをしながら、ぐったりと横たわっている猫たちがたくさんいた。


 ゼーゼーヒューヒューとあらい息をしているから、たぶんのどもやられている。


 ぼくは、苦しそうにうめきながら倒れている猫に近付いて、声を掛ける。


「ミャ?」


 大丈夫ですか?  


「……真っ白で、とっても綺麗きれい仔猫こねこの天使が見えるなぉ……ここは、天国なぉ? ボク、死んじゃったなぉ……?」


 うすく目を開けた猫は、ぼくをぼんやりと見て、かすれた声で言った。


 どうやら、高熱こうねつで悪い夢でも見て、うなされているようだ。


 可哀想かわいそうに……早くなんとかしないと。


 触ってみると、どの猫も高い熱を出している。


 病気になると熱が出るのは、体が病気と戦っているからなんだ。


 熱に弱いウィルスは、高い熱が出るとそれ以上増えることが出来なくなる。


 白血球はっけっきゅうは、体温が高いと強くなる。


 また、熱が出ると汗をいて、その汗で体を冷やして熱を下げる。


 せきやくしゃみや鼻水が出るのも、病原菌びょうげんきんを体の外へ出そうと、体が頑張がんばっているからなんだ。


 これが、ぼくたちが生まれつき持っている「生きる力」


 だから、熱が出たからって、すぐに熱さましの薬を飲んじゃダメなんだよ。


 熱を下げると、白血球はっけっきゅうがウィルスと戦えなくなっちゃうからね。


 熱が出ると、汗をいっぱいくから、体の水分がなくなって、脱水症状だっすいしょうじょうを起こしてしまう。


 まずは、たっぷりとお水を飲ませないと。


 そこで、お父さんとお母さんが追い付いてきた。


「シロちゃん、何か手伝えることはないかニャー?」


「薬草が必要なら、集めてくるニャ」


「ミャ!」


 ふたりとも、ちょうど良いところに来てくれて、ありがとう!


 ここの猫たちはみんな、のどかわいて苦しんでいるんだ。


 だから、川からお水をんできて、みんなに飲ませてあげて欲しい。


「分かったニャー」


「じゃあ、川を探すニャ」


 ぼくたちは周りを見回して、水のにおいをぎ、川を探す。


 よし、こっちだ。


 近くの川まで走って、葉っぱで作ったお皿にお水をみ、3匹で手分けして、猫たちにお水をくばって回った。

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