第163話 ネコと和解せよ

 トマークトゥスと友達になったリビアヤマネコは、きっとぼくが初めてに違いない。


 友達になったグレイさんの歯を、なおしてあげたい。


 いつまでもずっと、歯が痛いのは可哀想かわいそうだもんね。


 虫歯は、ケガや病気と違って、悪化あっかすることはあっても、自然治癒勝手に治るすることはない。


 虫歯の治療法ちりょうほうは、前に『走査そうさ』に教えてもらったんだけど。


 ぼくは、歯医者はいしゃさんじゃないから、歯科技術しかぎじゅつは持っていない。


 そもそも、歯を治療ちりょうする道具や薬が手に入らない。


「毎日、歯磨はみがきしましょう」って言われても、ハブラシもないし。


 犬だったら、歯磨はみがきセットとか、食べるだけで歯磨はみが効果こうかがあるエサとか、歯磨はみがきガムとか、カミカミするおもちゃとかがあるんだけど。


 自然界しぜんかいに、歯磨はみがきの代わりになるものって、なんかないのかな?


偶蹄目ウシやシカの骨やつのに、歯磨はみが効果こうかあり。むことで歯茎はぐき表面ひょうめんこすり、唾液だえき分泌出るされ、細菌さいきん増殖増えるの抑制おさえる


 偶蹄目ウシやシカの骨やつの


 なるほど、そういうもので良かったのか。


 そういえば、犬って骨をかじるのが大好きだもんね。


 長老のミケさんも、骨やつのをカミカミしたら、歯周病ししゅうびょうが治るのかな?


 猫も、むオモチャ好きだよね。


 今度、ためしに、ミケさんにも骨やつのをカミカミしてもらおう。


 だったらまず、狩りをしなくちゃ。


 狩りをすれば、お肉も骨もつのも手に入って、一石二鳥いっせきにちょう


 だけど、ぼくひとりじゃ、ウシやシカのような大きな動物は狩れない。


 大きな動物を狩ろうとしたら、お父さんやお母さん、集落しゅうらくの猫たちに協力してもらわなくちゃ。


 いっそのこと、グレイさんを、集落しゅうらくのみんなに「ぼくの友達だ」って、言えたらいいのにな。


 でも、トマークトゥスが友達って、絶対、誰も信じてくれないよね。


 トマークトゥスってだけで、猫たちはみんなビビり散らかす。


 とりあえず、お父さんとお母さんにお願いして、ウシやシカを狩ってもらおう。


 獲物えものを狩っても、ぼくたちだけじゃ食べきれない。


 ぼくたちが食べ残したお肉や骨は、基本的に、森の掃除屋そうじやさんが片付けてくれる。


 森の掃除屋そうじやさんってのは、森で死んだ動物の死体を食べる、動物や虫のこと。


 狩りが得意じゃない動物ってのがいて、そういう動物たちは、誰かが食べ残したお肉を食べるんだ。


 実はオオカミも、森の掃除屋そうじやさんなんだよ。


 どうにかして、お父さんやお母さんにバレずに、こっそりとグレイさんにお肉や骨を分けてあげられないかな?

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