第338話 魔性のメス猫

 手当てあてが終わったところで、レッドとブルーに話し掛ける。


「ミャ?」


 この集落しゅうらくに、お医者さんはいますか?


「なんにゃ? お医者さんごっこは、もう終わりかにゃ?」


「本物のお医者さんは、この集落にはいないナァ」


 レッドとブルーは、ふたりそろって首をかしげた。


 この集落しゅうらくにも、お医者さんはいないのか。


 お医者さんがいる集落しゅうらくの方が、少ないもんなぁ。


 これまでおとずれた集落しゅうらくで、お医者さんがいた集落しゅうらくは数えるほどしかなかった。


 だったら、この集落しゅうらくの猫たちにも薬草を教えないと。


 レッドとブルーには、このままお医者さんごっこに付き合ってもらうか。


「ミャ」


 次は薬草みをして、お薬を作ります。


 ぼくが薬草の見分みわけ方を教えますから、手伝ってくれませんか?


「さっき、兄ちゃんたちにってくれたお薬は、薬草だったのにゃ?」


仔猫こねこちゃんは、本物のお医者さんみたいだナァ」


 じゃなくて、本物のお医者さんなんだけどね。


 レッドとブルーは楽しそうに、ぼくのあとをついて来てくれた。


 ふたりに薬草の見分みわけ方を教えていると、フォーンが興味津々きょうみしんしんって来る。


「何しているニィー?」


「「フォーンちゃんっ!」」


 フォーンを見て、レッドとブルーはうれしそうな笑みを浮かべる。


「今、仔猫こねこちゃんと、お医者さんごっこをしているところにゃ」


「フォーンちゃんも、一緒にどうかナァ?」


「面白そうニィー。仔猫こねこちゃん、お姉さんもご一緒しても良いニィー?」


「ミャ!」

 

「ありがとうニィー。ワタシは、フォーンお姉さんって呼んでニィー」


 フォーンは、やさしく微笑ほほえんで、ぼくの頭をでてくれた。


 近くで見ると、フォーンは見惚みとれるほど美人さんな猫だった。


 小さい顔に対して、大きい綺麗きれいな緑色の目と、大きな耳。


 筋肉質きんにくしつ無駄むだのない引きまった体と、美しい毛並けなみ。


 レッドとブルーが、うばい合いのケンカをするのも分かる気がした。


 ぼくは3匹の猫たちに、薬草の見分みわけ方を教えた。


 3匹は、物凄ものすご物覚ものおぼえが早くて、頭が良かった。


 薬草の名前と特徴とくちょうを、すぐにおぼえてくれた。


 これだけおぼえが早いと、教えがいがある。


「これは、何に使う薬草ニィー?」


「ミャ」


 これは、ヨモギです。


 ほとんどのケガや病気に使える、万能薬ばんのうやくです。


仔猫こねこちゃんは、小さいのにとってもおりこうさんニィー。お姉さんはあなたみたいなかしこい子、大好きニィー」


 フォーンはぼくを抱き上げて、大好きのスリスリをしてくれた。


 美人なお姉さんにこんなことされたら、好きになっちゃうだろっ!


 もしかして、フォーンは魔性ましょうの女(男をき付ける魅力的みりょくてきな女)かな?

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