第185話 ヒアエノドンの襲来

 やみの中でギラギラと光るいくつもの目、あら息遣いきづかいの音が聞こえてくる。


 あれは何か教えてっ! 『走査そうさ』! 


対象たいしょう肉歯目にくしもくヒアエノドンぞくヒアエノドン』


概要がいよう肉食哺乳類にくしょくほにゅうるい。小型のヒアエノドンは夜間やかんに集団で狩りをし、大型は日中に単体ひとりで狩りをする』


 夜にれで現れたってことは、小型のヒアエノドンか。


 ヒアエノドンのれは、ぼくたちを食べようとしているんだ。


 集落しゅうらくのみんなに、逃げるように伝えなくちゃ!


「ミャーッ!」


 みんなー! 起きてーっ! 


 ヒアエノドンが集落しゅうらくおそおうとしてるから、早く逃げてーっ!


 ぼくは叫びながら、集落しゅうらくけ回る。


 猫会議ねこかいぎに参加していた猫たちも、大慌おおあわてで巣穴すあなへ向かい、寝ている猫たちを起こす。


 さわぎを聞きつけた成獣おとなたちは、仔猫こねこたちをくわえて、逃げ出した。


 巣穴すあなの側には、大きな岩壁がんぺきがある。


 岩壁がんぺきってのは、かべのようにけわしく切り立った巨大な岩のこと。


 この岩壁がんぺき防壁ぼうへきわりで、これがあるおかげで、外敵がいてきからおそわれにくくなる。


 集落しゅうらく天敵てんてきおそわれた時は、この岩壁がんぺきを登って逃げるんだ。


 ぼくたちが逃げ出したのを見て、やみにひそんでいたヒアエノドンのれが、集落しゅうらくへ飛び込んで来た。


 り返ると、するどくて長いきばが生えたハイエナみたいな動物たちが、えながら追い掛けて来る。


 あんなのにまれたら、絶対死んでしまう。


 なんとしても、逃げなければ!


「シロちゃん、逃げるニャッ!」


 巣穴すあなから飛び出してきたお母さんが、ぼくの首根くびねっこをくわえて岩壁がんぺきけ登る。


 お父さんは、ほかの猫の巣穴すあなに飛び込んで、仔猫こねこすくい出して、素早すばや岩崖がんぺきを登って行った。


 長老ちょうろうのミケさんも、他の猫の助けを借りながら登った。


 なんとか、集落しゅうらくの猫全員が、岩壁がんぺきの上へ避難ひなん出来た。


 ヒアエノドンのれは岩壁がんぺきの下で、「りて来い」とばかりに、えている。


 ヒアエノドンは、頭が馬のように縦長たてながで、首が短くて、胴体どうたいが長く、足が短い。


 そのせいか、岩壁がんぺきを登れないらしい。   


 4匹のヒアエノドンは、おなかがいているのか、しぶとくえ続けている。


 ぼくたちを食べるまで、あきらめないつもりらしい。


 ぼくたちは、岩壁がんぺきの上で身をせ合って、ヒアエノドンたちがあきらめてくれるまで、ひたすら待つしかなかった。



 ――――――――――――――――


【Hyaenodon《ヒアエノドン》とは?】


 今から5500万年くらい前に生息せいそくしていたと言われている、肉歯目にくしもく


 肉歯目にくしもくは、すでに絶滅ぜつめつしている。


 ライオンやオオカミの祖先そせんが生まれる前は、最強だったらしい。


 見た目はハイエナに似ているが、肉しか食べられない。


 体長約120cm、体重約15kg

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