第184話 夜襲

 ある夜のこと。


 猫たちは、それぞれ自分の巣穴すあなへ戻り、集落しゅうらく寝静ねしずまっていた。


 ぼくも、お父さんとお母さんの猫毛にもれて、眠っていた。


 だけど、何故かふと、目がめた。


 お父さんとお母さんの間から抜け出し、巣穴すあなから顔をのぞかせる。


 空を見上げると、夜明よあけはまだ遠いらしく、たくさんの星がまたたいていた。


 ぼくは星座せいざくわしくないから、どれが何座なにざとか全然分からない。


走査そうさ』に聞けば、教えてくれるんだろうけど、ぼくは星座せいざ興味きょうみがない。


 聞いたところで、「へぇ~、そうなんだ?」くらいしか言えない。


 そういえば、クラスメイトに、星座せいざくわしい子がいたっけ。


 いつも分厚ぶあつ星座図鑑せいざずかんを持ってて、「将来は、天文学者てんもんがくしゃになりたい」と言っていた。


 あの子は、夢をかなえられただろうか。


 猫に転生てんせいしてしまったぼくは、もう知ることが出来ない。




 夜風よかぜびたら体が冷えて、急におしっこがしたくなった。


 巣穴すあなを出て、集落しゅうらく共同きょうどう砂場トイレへ向かう。


 すると、数匹の猫たちが猫会議ねこかいぎをしていた。


 猫会議ねこかいぎは、特に何をする訳でもなく、仲良しの猫たちが集まっているだけらしい。


 猫たちは、輪になって座って、昼間と同じように毛づくろいをしたり、うたたしたりしている。


 猫会議ねこかいぎに参加していたサビネコのサビさんが、ぼくに話し掛けてくる。


「おや、シロちゃん、こんばんはニャア。こんな夜中に、ひとりで出歩いたら危ないニャア」


「ミャ」


 サビさん、こんばんは。


 おしっこに行きたくなって、起きちゃったんです。


「おしっこニャア? それは、呼び止めちゃって、ごめんニャア」


 猫会議ねこかいぎに集まっていた猫たちはそれを聞くと、「らす前に、早く行っておいで」と、小さく笑った。


 ぼくも笑い返して、砂場トイレへ急いだ。


 砂場トイレで、ようませて戻って来ると、ぼくも猫会議ねこかいぎに混ざってみる。


「ミャ?」


 皆さん、最近、ケガとか病気とかしていませんか?

  

「私は、大丈夫ニャア」


「オレは最近、目がかゆかったり、くしゃみや鼻水が止まらなくなったりして、大変ニャン。でも、シロちゃんが薬をくれたおかげで、だいぶ楽になったニャン」


「ミャ」


 花粉症かふんしょうは、ツラいですよね。


 花粉症かふんしょう時季じきが終わるまで大変ですけど、気長きなが治療ちりょうしましょうね。




 そんなことを、和やかに話していた時だった。


 どこからともなく、天敵てんてきいやにおいがただよってきて、低いうなり声がいくつも聞こえてくる。


 マズい! 集落しゅうらくが、何かのれにねらわれているっ!

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