第183話 春の花粉症

 あったかくなったら、お父さんとお母さんにお願いをして一緒に旅へ出よう。


 旅に出れば、またどこかでグレイさんと会える。


 そう思ったら、さびしさや悲しさはなくなった。


 前の旅では、山を越えて海へ行った。


 今度は、どこへ行こうかな?


 グレイさんは、どこへ行ったかな?


 グレイさんを探しながら、旅をするのも良いかもしれない。


「グレイさんを探して、ここまで会いに来た」と言ったら、よろこんでくれると思う。


 その頃には、グレイさんはつがいや新しいれを作っているかもしれないけど。


 もし、つがいれが出来ていたら、もう会えないな。


 その時はその時で、残念だけど、あきらめて集落しゅうらくへ帰ろう。


 今はまだ少し寒いから、旅へ出るのは、もう少し先になるけれど。




 グレイさんがいなくなってから、イチモツの集落しゅうらくには、おだやかな日々が戻って来た。


 集落しゅうらくの猫たちは、今日も自由気じゆうきままに過ごしている。


 おなかがいたら狩りをして、おなかがいっぱいになったら、日向ぼっこをしながらお昼寝をする。


 起きたら毛づくろいをして、あとは好きなことをして過ごす。




 ぼくと茶トラ先生は、ケガや病気の猫がいれば、薬草をみに行ったり、薬を作ったりしている。


 ぼくが教えたおかげで、茶トラ先生も薬草にくわしくなった。


 やっぱり、万能薬ばんのうやくのヨモギにたよりがちなんだけどね。 


 あったかくなってきたからか、花粉症かふんしょうに悩まされる猫たちが増えてきた。


 秋の花粉症かふんしょうの原因植物は、ヨモギやブタクサ。


 春の花粉症かふんしょうの原因植物は、スギやヒノキ。


 ヨモギは、秋の花粉症かふんしょう悪化あっかさせちゃうけど、春の花粉症かふんしょうには有効ゆうこうなんだ。


 ヨモギには、抗酸化作用こうさんかさよう炎症えんしょうおさえる効果こうかがある。


 だから、春の花粉症かふんしょうのアレルギー症状しょうじょうを、軽くすることが出来るんだ。


 秋の花粉症かふんしょうには、ローズヒップを使ったけど、今は時季じきじゃないから使えない。


 ローズヒップが収獲しゅうかく出来るのは、秋だからね。


 アロエの汁を目薬めぐすりとして目にせば、目のかゆみをおさえることが出来るんだ。


 あと、ミケさんの看病かんびょうも忘れていないよ。


 この前、歯周病ししゅうびょう対策たいさくとして、シカのつのや骨をむようにすすめたんだけど。


あごが痛くて、めないにゃ」と、ことわられてしまった。


 結局、今まで通り、おやつの猫草ねこくさを毎日、みしている。


 そんな感じで、猫たちの病気やケガを治療ちりょうをしながら、のんびりと日々は過ぎていった。

 

 あったかい春がやって来るのを、心待こころまちにしながら。

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