第367話 旅の思い出

 イチモツの集落しゅうらくの猫たちは、旅の話を聞きたがった。


 猫は縄張なわばり意識が強いから、何か特別な事情がない限り、生まれて死ぬまで縄張なわばりから出ない。


 でも、好奇心旺盛こうきしんおうせいだから、外の世界に興味津々きょうみしんしんなんだ。


 ぼくは、旅の間に起こった出来事できごとをひとつずつかたった。


 今回の目的は、洪水被害こうずいひがいを確認することだった。


 高台たかだいにあるイヌノフグリの集落しゅうらくは、洪水こうずい被害ひがいはなかった。


 シロツメクサの集落しゅうらく平地へいちなので、大雨おおあめ水浸みずびたしになっていた。


 集落しゅうらくの猫たちは、がけに掘った横穴よこあな避難ひなんしていたので全員無事だった。


 コメツブツメクサの集落しゅうらくは、猫の子一匹いなくなっていた。


 どこかへ避難ひなんしたのか、それとも……。


 コメツブツメクサの集落しゅうらくの猫たちがどうなったかは、分からない。


 全員生き延びてくれていることを、願うばかりだ。


 ナズナの集落しゅうらくでは、土砂崩どしゃくずれが起きて、猫たちが巻き込まれる事故が起きていた。


 土砂崩どしゃくずれの原因は、ぼくが粘土層ねんどそうり出してしまったからだと思う。


 集落しゅうらくおさは、ぼくのせいじゃないとなぐさめてくれたけど。


 土砂崩どしゃくずれでくなった猫たちを思うと、申し訳ない気持ちと悲しみで胸がとても痛い。


 ノアザミの集落しゅうらくでは、洪水こうずいから逃げ遅れたお年寄りの猫たちがくなっていた。


 集落しゅうらくおさと、おさを助けようとした猫たちもくなっていた。


 現在は、若い猫が新しいおさつとめている。


 ノアザミの集落しゅうらくの猫たちは、細菌性食中毒さいきんせいしょくちゅうどくで苦しんでいた。


 くさった肉を食べて、おなかをゴロゴロこわしてしまったピーちゃんになったらしい。


 食中毒しょくちゅうどく症状しょうじょうで、炎症性腸疾患えんしょうせいちょうしっかんかかっていた猫がいた。


 炎症性腸疾患えんしょうせいちょうしっかんは、原因不明げんいんふめいの治らない病気。


 生きているかぎり、死ぬまで治療ちりょうし続けなければならない。


 クロトビさんは、今も闘病とうびょう生活を続けているのだろうか。


 急いでいたとはいえ、クロトビさんの病状びょうじょう確認かくにんする為、ノアザミの集落しゅうらくだけは立ち寄れば良かった。


 今更いまさら思い出しても、遅いけど。


 ノアザミの集落しゅうらくを後にして、北のはしっこを見に行こうとしたら、お父さんとお母さんとグレイさんに止められた。


 前回の旅で、Argentavisアルゲンタヴィス(巨大なたか)に連れ去られたからだ。


 仕方がないので、森から出ずに西へ方向転換ほうこうてんかんした。


 泉の集落しゅうらくでは、大雨おおあめ集落しゅうらく水浸みずびたしになったものの、洪水被害こうずいひがいはなかった。


 そこで、三角関係さんかくかんけいAbyssinianアビシニアンの猫たちと出会った。


 レッドとブルーは、魔性ましょうのメス猫のフォーンを取り合って、喧嘩けんかをしていた。


 結局、フォーンはどちらを選んだのか分からなかったな。


 泉の集落しゅうらくで秋のおとずれを感じ取ったぼくは、イチモツの集落しゅうらくへ帰ろうとしたんだけど。


 ぼくたち全員、マダニ感染症かんせんしょうかかっていた。


 それからマダニ感染症かんせんしょう治療ちりょうで、1ヶ月くらい動けなくなってしまった。


 病気が治った後は、ひたすらイチモツの集落しゅうらくを目指して、走り続けた。


 こうして振り返ってみると、今回の旅はつらいことの連続れんぞくだったな。


 しばらくは、イチモツの集落しゅうらくでゆっくりと心と体を休めたい。


 そろそろ冬がせまってきているから、旅へ行きたくても行けないし。


 春が来るまで、旅はお休みだ。

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