第232話 ベントナイト

走査そうさ』の案内にしたがって、走っていくと。


「かゆいかゆい」と、泣いている猫たちの声が聞こえてきた。


 ぼくは耳をピクピクさせて、ピタリと立ち止まる。


 お父さんとお母さんとグレイさんも、一緒に立ち止まった。


 お父さんとお母さんが、真剣しんけんな顔で話し掛けてくる。


「シロちゃんも、聞こえたニャー? この先に、苦しんでいる猫たちがたくさんいるニャー」


「みんな泣いてて、可哀想かわいそうニャ。早く助けないとニャ」


「ミャ」


 じゃあ、お父さんとお母さんは、ヨモギとアロエを集めてきてくれる?


 ぼくは、シロバナムシヨケギクを集めるから。


「分かったニャー」


「ヨモギとアロエは、どのくらい必要ニャ?」


「ミャ」


 ノミがついた猫がたくさんいるはずだから、出来るだけたくさん。


「たくさんニャー? 分かったニャー」


「私はヨモギを集めるニャ、お父さんはアロエを集めてニャ」


 お父さんとお母さんはれた手つきで、ヨモギとアロエを集め始める。


 薬草集めをするふたりを見て、グレイさんが「オレもオレも」と、声を掛けてくる。


『シロちゃん、オレにも何かお手伝い出来ることはあるか?』


 グレイさんに、出来ることか。


 グレイさんは細かい作業よりも、肉体労働にくたいろうどうが向いているんだよね。


 珪藻土けいそうどが近くに埋まっていれば、掘り出してもらうけど。


 このあたりには、珪藻土けいそうどはない。


 今のところ、狩りも必要なさそうだし、あとは見張りくらいか?


 グレイさんは、役に立ちたそうな顔で、「まだかまだか」とぼくの返事を待っている。


 すると、『走査そうさ』が発動はつどうした。


対象たいしょう:ベントナイト』


概要がいよう:高い粘性ねんせい粘着性ねんちゃくせい吸水性きゅうすいせい吸着性きゅうちゃくせいなどの性質せいしつを持つ粘土鉱物ねんどこうぶつ


用途ようと分散剤ぶんさんざい増粘剤ぞうねんざい保湿剤ほしつざい増量剤ぞうりょうざい吸着剤きゅうちゃくざいなど』


 粘土ねんど


 見た感じ、いろんなことに使えるみたいだけど。


 珪藻土けいそうどの代わりに、ベントナイトを使えってことかな?


 そういうことなら、穴掘あなほりが得意なグレイさんにたのもう。


 ベントナイトの場所を教えて、『走査そうさ


位置情報いちじょうほう右折うせつ30m、直進ちょくしん50m、右折うせつ10m』


 ありがとう、『走査そうさ


 ぼくはニッコリと笑って、グレイさんに話し掛ける。


「グレイさんにピッタリの、グレイさんにしか出来ないことがあるミャッ!」


『オレにしか出来ないことだと? もちろん、シロちゃんのお願いだったら、なんでも聞くぞ』


「じゃあ、付いてきてミャ」


走査そうさ』の案内通りに歩いていけば、大きな地層ちそうかべ辿たどいた。


 どの地層ちそうが、ベントナイト?


位置情報いちじょうほう灰白色はいはくしょく地層ちそう


 灰白色はいはくしょく地層ちそう……これか。


 肉球でポンポンと、ベントナイトの地層ちそうを叩いて、グレイさんにお願いする。


「グレイさん、この白い土が欲しいミャ」


『なんだ? 土が欲しいのか? よし、任せろっ!』


 グレイさんはり切って、ベントナイトの地層ちそうを掘り始めた。


―――――――――――――――――――


bentoniteベントナイトとは?】


 ビックリするほど、いろんなことに使える粘土ねんど


 土木工事用防水材どぼくこうじようぼうすいざい掘削用泥水くっさくようでいすい陶磁器とうじき、化粧品、洗剤、石鹸せっけん、農薬、練炭れんたん軟膏なんこう、スカルプシャンプー、猫砂ねこすな、乾パンなどにも入っている。


 鉱石こうせきとしては、チョークや石膏せっこうくらいのかたさなので、簡単に掘れる。

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