第233話 猫神様が見ている

 グレイさんが頑張がんばって掘ってくれたおかげで、ベントナイトが手に入った。


 次は、シロバナムシヨケギクの花の部分だけをむ。


 白いマーガレットみたいな花で、とっても綺麗きれい


 せっかく綺麗きれいに咲いたのに、んじゃうのは、可哀想かわいそうな気持ちになる。


 でも、猫たちの病気を治す為だから、ごめんね。


 シロバナムシヨケギクは、花に殺虫成分さっちゅうせいぶんふくんでいるんだって。


 ノミ取り粉にするには、お日様の力で乾燥させた花を使うらしいんだけど。


 目の前で苦しんでいる猫たちがいるのに、乾燥を待っている余裕はない。


 そこで使うのが、ベントナイトだ。


 ベントナイトは、高い吸水性きゅうすいせいを持っているという。


 つまり、シロバナムシヨケギクの水分を、ベントナイトに吸わせようってこと。

 

 ベントナイトは、食べられる土だから、猫の体に掛けても安全安心。


 ベントナイトを粉にして、シロバナムシヨケギクの花と混ぜれば、ノミ取り粉の出来上がりだ。


 出来たノミ取り粉は、大きな葉っぱに包んでいく。


 グレイさんは、掘り出したベントナイトを、叩いて粉にする作業を手伝ってくれた。


 グレイさんは感心した様子で、ぼくの作業を見守っている。


『ノミ取り粉まで作ってしまうなんて、やっぱり、シロちゃんはすごいな』


「ぼくは、何もすごくないミャ。全部、『走査そうさ』が教えてくれた通りにやっているだけミャ。すごいのは、『走査そうさ』の力をぼくにさずけてくれた、猫の神様ミャ」


『猫の神様は、本当に素晴らしい神様だな。オレは、猫の神様に心から感謝したい』


 そう言って、グレイさんは空に向かって両前足を合わせて、猫の神様に祈った。


 確かに、猫の神様はめちゃくちゃすごい神様だよね。


 人間だったぼくを猫に転生させてくれたり、生き返らせてくれたり。


 何よりも『走査そうさ』は、ぼくが困った時にはいつも助けてくれる。


 猫の神様は、いつでもぼくを見守ってくれているって言っていたよね。


 だったらきっと、ぼくの声も聞こえているはず。


 ぼくもグレイさんと同じように、両前足の肉球を合わせると目を閉じて、神様にお祈りする。


「猫の神様、いつもありがとうございますミャ。これからも、よろしくお願いしますミャ」


『――こちらこそ、少年』


走査そうさ』が発動はつどうした時と同じように、猫の神様の言葉が、脳内に直接流れ込んできた。


 えっ? 猫の神様っ?


 猫の神様ですよねっ?


 ハッと目を開けて、空を見上げた。


 だけど、それっきり、何度呼び掛けても、猫の神様がこたえてくれることはなかった。 

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