第234話 犬も換毛期

 ノミ取り粉が出来たら、今度はノミブラシを作ろう。


 ノミブラシは、数十本の松の葉をたばねて、細長い葉っぱでグルグル巻きにするだけ。


 そのままだと、松の葉の先がチクチクさって痛いので、石で先っぽを少しだけけずる。


 これで、ノミブラシの完成。


 木の棒で持ち手を付けると、使いやすくなる。


 今回は、持ち手は付けずに、とにかくたくさん作ろう。


 ノミブラシを作るぼくを見て、グレイさんが不思議そうに首をかしげる。


『シロちゃん、何を作っているんだ?』


「これは、ノミブラシミャ。こうして使うミャ」


 試しに、グレイさんをブラッシングしてみると、毛がごっそりと抜けた。


 そういえば、犬科いぬかの動物も、春と秋が換毛期かんもうきだったな。


 抜けた毛を見て、グレイさんが感激している。


『おおっ! オレもやってみたいっ!』


「どうぞミャ」


 グレイさんは、楽しそうに自分の体をブラッシングし始める。


すごい! いっぱい毛が抜けていくぞっ!』   


「あんまりやりすぎると、 毛を痛めちゃうから、やりすぎないように気を付けてミャ」


『やりすぎってのが、どのくらいか分からないな。適当なところで、止めてくれ』


「分かったミャ」


 グレイさんがブラッシングするのを見守っていると、抜け毛の山が出来上がった。


 グレイさんとぼくじゃ、体の大きさが3倍くらい違うからな。


 ブラッシングしたら、ボサボサの冬毛が抜けて、すっきりした見た目になった。


「グレイさん、ブラッシングしたら、綺麗きれいになったミャ」


『ふふっ、またれ直したか?』


「うん、さらにカッコよくなったミャ」


『そうか! ならば、毎日、ブラッシングしなくてはなっ!』


 めてあげると、グレイさんは満足げに笑った。




 ぼくとグレイさんは、ノミ取り粉とノミブラシを抱えて、待ち合わせの約束をした場所へ戻った。


 待ち合わせ場所へ向かうと、お父さんとお母さんが、たくさんのヨモギとアロエを抱えて待っていた。


「シロちゃん、待っていたニャー」


「これだけあれば、足りるかニャ?」


「ミャ」


 ありがとう、お父さんとお母さん。


 とりあえず、これだけあればなんとかなると思う。


 これで、猫たちを助けに行こう。


「グレイさんは、ここで見張りをお願いミャ」


『分かった。また何かあったら、いつでも呼んでくれ。行ってらっしゃい、シロちゃん』


「行ってきますミャ!」


 必要なものは、ひと通りそろった。


 グレイさんに見送られて、ぼくたち3匹は、ノミアレルギーで苦しんでいる猫たちがいる場所へと急いだ。

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