第191話 これからもずっと

「ミャ?」


 ミケさん、グレイさんはイチモツの集落しゅうらくへ入れないんですよね?


 それでどうやって、グレイさんに集落しゅうらくを守ってもらうんですか?


集落しゅうらくの外なら、どこにいてくれても良いにゃ。ただし、出来る限り、猫たちの目に付かないところにいて欲しいにゃ。集落しゅうらくおそわれた時だけ、助けに来てにゃ」


『……分かった、その条件をもう』


 グレイさんは悲しそうな笑みを浮かべて、力ない声で答えた。


 返事を聞いて、ミケさんは満足げに笑う。


物分ものわかりが良いトマークトゥスで、良かったにゃ」


 結局、ミケさんの一方的いっぽうてき要求ようきゅうが通ってしまった。


 グレイさんの「近付けなくても、見られるだけで良い」というささやかな願いすら、かなわなかった。


 グレイさんの優しさにつけ込んだ形になってしまい、ぼくは納得なっとく出来なかった。


 ミケさんが、長老ちょうろうとして、集落しゅうらくの猫たちを守りたい気持ちは分かる。


 だけど、これじゃ、あまりにもグレイさんが可哀想かわいそうじゃないか。


 せめて、ぼくだけでも、グレイさんに優しくしたい。


 ぼくは、ションボリしているグレイさんに、体をすり寄せる。


「グレイさん! ぼくはずっと、グレイさんのお友達ミャッ!」


『ありがとう。やはり、オレが愛しているのは、シロちゃんだけだ。その優しさと愛くるしさに、またれ直したぞ。何度、れさせれば、気がむんだ、まったく……』


 グレイさんはすぐに機嫌きげんを直して、しっぽをブンブンとって、ぼくの顔をめ始めた。


 じゃれ合うぼくとグレイさんを見て、ミケさんはあきれた顔をしていた。


 しばらくして、ぼくはミケさんに向き直り、真面目な顔を作って話し掛ける。


「ミャ?」


 まさかまたぼくに、「グレイさんとおわかれしろ」とは、言いませんよね?


「シロちゃんが、グレイさんとお友達だったおかげで、ワシらは助かったからにゃ。仕方しかたがないから、お友達だけはゆるしてあげるにゃ」


「グレイさん、やったミャ! グレイさんとお友達でいることは、ミケさんに許してもらえたミャッ!」


『本当か? これからもずっと、シロちゃんと一緒にいられるのか?』


「これからも、ずっと一緒ミャッ!」


『そうか! オレたちは、このまま永遠に愛し合えるんだな? 良かった、本当に良かったっ!』


 抱き合って喜び合うぼくとグレイさんを見て、ミケさんはあきれた口調くちょうで、ボソリと何かを言い残して、集落しゅうらくの中へ戻って行った。

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