第269話 猫が爪研ぎをする理由

 骨がつながっても、筋力や体力がなくちゃ歩けない。 


 少しずつ距離きょりを伸ばしながら、 毎日欠かさず、歩く練習を続けた。


 今まで当たり前に歩いていたけど、歩くって、こんなに難しかったのか。


 この集落しゅうらくに来てから約1ヶ月後には、やっと普通に歩けるようになった。


 だけど、ちょっと気を抜くところびそうになるし、走れないし、ジャンプも出来ない。


 走れないと、狩りも出来ないし、天敵てんてきねらわれたら逃げられない。


 元通り動けるようになるには、もう少しかかるかもしれない。


 あれから、もう1ヶ月。


 みんな、元気かな?


 お父さんとお母さんとグレイさんに、早く会いに行きたい。


走査そうさ』すれば、3匹がどこにいるかはすぐ分かる。


 だけど、ぼくが今まで通り動けなければ、会いに行けない。


 場所が分かっても、そこまで行けなきゃ意味がない。


 ひとりじゃ、どこへも行けない。


 動けないことが歯痒はがゆくて、近くの木でバリバリと爪研つめとぎをする。


 猫は本能的ほんのうてきに、「つめぎたいっ!」という欲求よっきゅうがあるんだよ。


 猫がつめぐ理由は、いろいろある。


 ①マーキング。


「ここが自分の縄張なわばりだ」と、主張しゅちょうする為、特定の場所で爪研つめとぎをする。


 ②つめのお手入れ。


 猫のつめは、玉ねぎみたいに、何重なんじゅうそうになっていて、外側にいくほど古くなる。


 この古くなったつめがして、するどつめを保つ為に、爪研つめとぎをする。


 ③気分転換きぶんてんかん


 気持ちを落ち着かせたり、ストレス発散はっさんが目的で、爪研つめとぎをすることもある。


 猫にとって、爪研つめとぎはとても大切なことなんだ。


 だから、猫がかべはしら爪研つめとぎをしても、怒らないであげてね。 


 バリバリしたら、ちょっとスッキリしたし、つめ綺麗きれいになった。


 つめ綺麗きれいになると、なんかうれしい。


 爪研つめとぎをしていると、サビーとタビーが声を掛けてくる。


「そんなにバリバリして、どうしたにゃあ?」


「何か嫌なことでもあったニャウ?」


「ミャ……」


 思うように体が動かないから、くやしくて……。 


「シロちゃんは、まだまだちっちゃいからにゃあ。いっぱい食べて、大きくならないとにゃあ」


「シロちゃんがもっと大きくなったら、お兄ちゃんたちが、狩りに連れて行ってあげるニャウ」


 サビ―とタビーは、よしよしとぼくの頭をでてなぐさめてくれた。


 気持ちはうれしいけど、ぼくはもうこれ以上大きくならないんだよね。


 それに、ぼくの方が年上なんだけどな。


 年下の猫に仔猫扱こねこあつかいされて、ちょっとくやしくて、またバリバリした。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る