第270話 アオキ先生の許可

 アオキ先生の集落しゅうらくに来てから、約1ヶ月半後。


 歩いたり、走ったり、飛びねたり、木登りの練習などをした。


 いっぱい頑張がんばったおかげで、ようやく元通り動けるようになった。


 これでやっと、お父さんとお母さんとグレイさんを探しに行けるっ!


 そうと決まれば、みんなにおわかれの挨拶あいさつをしよう。


 その前に、サビーとタビーに、次の集落しゅうらくまで送ってもらえるように、お願いをしないとね。


 集落しゅうらくを見回すと、ふたりは仲良くお互いを毛づくろいしていた。


 ふたりに近付いて、声を掛ける。


「ミャ」


 すみません、サビーさん、タビーさん、お願いがあるんですけど。


「お願いって、なんにゃお?」


「お兄ちゃんたちに出来ることなら、なんでも任せるニャウ」


 ふたりは、得意げな顔でニッコリと笑った。


「ミャ」


 ここから一番近い集落しゅうらくまで、連れて行ってもらえませんか?


「ここから一番近い集落しゅうらくにゃお?」


「そんなところへ行って、どうするニャウ?」


 ふたりそろって、不思議そうな顔で首をかしげた。


「ミャ」


 ぼくのお父さんとお母さんを、探しに行きたいんです。


「シロちゃんのお父さんとお母さんは、アオキ先生とハチミケさんにゃお?」


「ミャ」


 それは、この集落しゅうらくにいる間だけです。


 本当のお父さんとお母さんと、大事な友達に会いに行きたいんです。


「本当のお父さんとお母さんは、おとなり集落しゅうらくにいるニャウ?」


「ミャ」


 おとなり集落しゅうらくには、いません。


 集落しゅうらくから集落しゅうらくへと旅しながら、探すつもりです。


「送り届けるくらいは、出来るけどにゃお……」


「シロちゃんをひとりで旅させるのは、とっても心配ニャウ……」


 サビーとタビーは、困りてた様子で顔を見合わせた。


 ふたりは少し話し合った後、「アオキ先生の許可から出たら良い」と言った。


 もともと、アオキ先生やお世話せわになった猫たちに、挨拶回あいさつまわりをするつもりだったんだ。


 ぼくはさっそく、アオキ先生のお茶工房ちゃこうぼうへ向かった。




 アオキ先生は木に登って、枝に薬草の束を干しているところだった。


 ぼくが声を掛けると、ニコニコ笑いながら降りてくる。


「シロちゃん、今日も元気かにゃあ?」


「ミャ」


 アオキお父さん、長い間お世話せわになりました。


 この通り、元気になりましたので、集落しゅうらくから旅立ちます。


「にゃにゃっ? 君のような仔猫こねこが、集落しゅうらくから出るなんて危ないにゃあ! また、天敵てんてきおそわれちゃうにゃあっ!」


 ぼくの話を聞いて、アオキ先生はとてもおどろいた。


 引きめるように、ギュッと抱き締められた。


「ミャ」


 集落しゅうらくの外が危ないのは、知っています。


 ですから、おとなり集落しゅうらくまで、サビーさんとタビーさんに送ってもらう約束をしています。


「それでも、ダメにゃあ。シロちゃんが、お父さんとお母さんに会いに行きたい気持ちは分かるけど、危なすぎるにゃあ」


 アオキ先生は、集落しゅうらくから出ることを許してくれそうにない。


 う~む……どうしたものか。

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