第198話 助け合って生きていく

 話し合いの結果、茶トラ先生が集落しゅうらくおさになることが決まった。


 茶トラ先生は、「私なんかで、いいのかニャ~」と、困り顔で言っていたけど。


 茶トラ先生が、お医者さんとして今まで集落しゅうらくを守ってきたことを、みんなが知っている。


 それに、茶トラ先生は、誰よりもみんなのことを知っている。


 みんなも、誰よりも優しい茶トラ先生が大好きなんだ。


 茶トラ先生が弱くても、他の強い猫たちが外敵がいてきから集落しゅうらくを守れば良い。


 誰だって、得意とくいなこと、不得意ふとくいなことがある。


 今までだって、集落しゅうらくむ仲間同士で、支え合ってらしてきたじゃないか。


 これからも、みんなで助け合って生きていけば良いんだ。



 ミケさんを看取みとり、次のおさも茶トラ先生に決まり、集落しゅうらくでやるべきことはやった気がする。


 これで、心置こころおきなく、旅へ出られる。


 やっと、グレイさんと会えるんだ。


走査そうさ』! グレイさんの場所を教えてっ!


対象たいしょう:食肉目イヌ科イヌ属トマークトゥス』


個体名なまえ:グレイ』


位置情報いちじょうほう右折うせつ20m、直進ちょくしん150m、左折させつ10m先』


 いつもありがとう、『走査そうさ


走査そうさ』が教えてくれるおかげで、迷わずにグレイさんを見つけることが出来て、本当に助かっているよ。


 ぼくは『走査そうさ』の案内にしたがって、グレイさんの元へ向かった。


「グレイさん! 会いに来たミャッ!」


『おおっ、シロちゃん! やっと来てくれたかっ! 待ちかねていたぞっ!』


 お昼寝していたらしいグレイさんは、ぼくを見るとガバリと勢いよく起き上がって、抱き付いてきた。


 ぼくの顔をペロペロめながら、千切ちぎれそうなくらい、しっぽを振ってよろこんでいる。


『会いたかった。シロちゃんと会えない間、ずっとさびしくて仕方なかったんだ。会えて、とってもうれしいよ』


「ぼくも、ずっとグレイさんに会いたかったミャ」


『シロちゃんが会いに来れたということは、ミケさんはくなってしまったのか……』


「うん、くなったミャ。ミケさんはとっても優しくて、良い長老ちょうろうだったミャ」


『あの集落しゅうらくは、良い集落しゅうらくだ。もちろん、集落しゅうらく最期さいごまで守り抜いた長老ちょうろうは、良い猫だろう。ちゃんと、ミケさんの最期さいご看取みとることは出来たか?』


「出来たミャ。ミケさんは最期さいごに、『グレイさんを受け入れてあげられなくて悪かった』って、言っていたミャ。きっとミケさんは、グレイさんとお友達になりたかったけど、集落しゅうらくおさとしての立場があるから、仲良く出来なかったんだミャ」


『そうか……ミケさんの本当の気持ちを知れただけで、うれしいよ。教えてくれて、ありがとう、シロちゃん』


 そう言って、グレイさんはれやかに笑った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る