第199話 新たな旅へ

「いってらっしゃいニャ~。くれぐれも、気を付けてニャ~」


「元気でニャア」


「早く帰ってきてニャン」


 ミケさんがくなってから、数日後。


 ぼくとお父さんとお母さんの3匹の猫は、集落しゅうらくの猫たち全員にお見送りされて、旅へ出ることになった。


「ミャ」


 行ってきます。


 今回は、前よりは早く帰ってくるつもりです。


 皆さんも、どうかお元気で。


 ぼくは、集落しゅうらくの猫たちに向かって大きく両手を振りながら、集落を旅立った。


 前回の旅では、集落しゅうらくから真っ直ぐ走って行って、森の外に何があるのかを見に行ったけど。


 今回の旅の目的は、イチモツの森を調べようと思っている。


 イチモツの森の中に、猫の集落しゅうらくがどれだけあるのかを知りたい。


 ぼくたち猫は基本的に、集落しゅうらくを出て、狩場かりばで狩りをするんだけど。


 狩場かりばの広さは、だいたい半径はんけい500m


 ほとんどの猫は、狩場かりばを出ることがないから、外の世界を知らないんだよね。


 他の集落しゅうらくたずねて、色んな猫に会ってみたい。


 集落しゅうらくにお医者さんがいたら、話をしたい。


 お医者さんがいなかったら、薬草の作り方と使い方を教えたい。


 ケガや病気で苦しんでいる猫がいたら、助けたい。


 やりたいことが、いっぱいだ。


 それに、今回の旅には、グレイさんがついて来てくれる。


 グレイさんは集落に入れないので、集落しゅうらくの外で待ち合わせをして、途中とちゅう合流ごうりゅうする約束をしている。


 待ち合わせ場所では、グレイさんがしっぽを大きくりながら、おすわりをして待っていた。


「グレイさん、お待たせミャ!」


『おお、シロちゃん! ようやく一緒に旅へ出られるんだなっ! この日を、どれだけ待ちかねていたことかっ!』


 グレイさんはウキウキした足取りで、ぼくに体をすり寄せた。


 ぼくも、グレイさんに体をスリスリする。


「ぼくも、グレイさんと旅に出られるのを、とっても楽しみにしていたミャ」


『猫の集落しゅうらくたずねて回ると聞いているが、本当にオレがついて行って大丈夫だろうか?』


「大丈夫ミャ。何かあったら、ぼくがなんとかしてグレイさんを助けるミャ」


『そうか、シロちゃんは可愛いだけじゃなくて、たのもしいな。だったらオレは、旅の間中、シロちゃんとお父さんとお母さんを守ってみせるぞ』


「みんなで助け合うミャ」


『もちろんだとも』


 お父さんとお母さんは、ぼくとグレイさんのやり取りを見て、微笑ほほえましそうに笑っている。


「本当に、シロちゃんとグレイさんは仲良しさんニャー」


「グレイさん、どうかよろしくお願いしますニャ」


 こうしてぼくたち4匹は、新たな旅へと出掛けた。

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