第319話 8月8日は世界猫の日

 まずは、お父さんとお母さんに相談をすることにした。


 ふたりは、風通かぜとおしの良いすずしい場所で、仲良く毛づくろいをしていた。


 ぼくはふたりに近付いて行って、話し掛ける。


「ミャ」


 あのね、お父さん、お母さん。


 また旅へ出たいんだけど、一緒に来てくれる?


 この間、大きな洪水こうずいがあったでしょ?


 だから、他の集落しゅうらくの猫たちが無事ぶじかどうかを、確認かくにんしたいんだ。


「シロちゃんは、相変あいかわらずやさしい子だニャー」


「私たちは、シロちゃんが行きたいところなら、どこまでも付いて行くニャ」


 お父さんとお母さんは、ニッコリと笑ってうなづいてくれた。


 ぼくも笑顔で、「ありがとう」と言って、ふたりにお礼の毛づくろいをした。



 その日の夜、グレイさんにも相談をしに行った。


「グレイさん、また一緒に旅へ行かないミャ?」


『もちろん、行くに決まっている。次はいつ行くのかと、ずっと待ちかねていたぞ。旅に出れば、いつでもシロちゃんのそばにいられるからな』


 グレイさんは、しっぽをブンブン振って、よろこんでくれた。


 グレイさんは、イチモツの集落しゅうらくまわりで、息をひそめてかくれているより、旅をして走り回っている方が好きだもんね。


 3匹がついて来てくれれば、旅へ行ける。


 グレイさんが守ってくれることが、何よりも心強こころづよい。


 ぼくひとりじゃ、イチモツの集落しゅうらく縄張なわばりから出ることも出来ない。


 猫なのに、狩りも満足に出来ないなんて……猫失格だなぁ。


 でも、狩りが出来ない猫がいたって、いいじゃないか。


 ぼくは命をうばうより、命をすくいたい。


 それが、お医者さんとしての使命しめいだから。



 翌朝よくあさ


 集落しゅうらくへ戻ると、茶トラ先生に旅へ出ることを伝えた。


 茶トラ先生は、いつものようにやさしく微笑ほほんで、頭をでてくれる。


「シロちゃんは、良い子だニャ~。イチモツの集落しゅうらくの猫たちは、ワタシたちが守るニャ~。シロちゃんは、他の集落しゅうらくの猫たちを助けてニャ~」


「シロ先生、この間、帰って来たばかりなのに、また行っちゃうニャウ? とってもさびしいニャウ。弟子でしとして、もっと色々教えて欲しかったニャウ」


 キャリコはぼくに抱きいて、わかれをしんでくれた。


 ぼくはキャリコを抱き返して、頭をポンポンする。


「ミャ」


 寒くなる前には、帰ってきますから。


 それまで、キャリコさんが、この集落しゅうらくの猫たちを守って下さいね。


 帰ってきたら、みんなで一緒に焚火たきびをしましょう。


焚火たきびって、なんですニャウ?」


「ミャ」


 それは、帰ってきてからのお楽しみですよ。


「だったら、早く帰ってきて下さいニャウ! ずっとずっと、待っていますニャウッ!」


 キャリコは涙を流して、ぼくを強く抱き締めた。


 ぼくたちがまた旅へ出ると聞いて、集落しゅうらくの猫たちが全員、お見送りに来てくれた。


 4度目の旅立ちとなれば、みんなもれたものだ。


 猫たちは、「いってらっしゃいニャー」と、笑顔で手を振ってくれた。


 ぼくとお父さんとお母さんも手を振り返して、集落しゅうらくを旅立った。


 途中とちゅうで、グレイさんと合流ごうりゅうし、4匹の旅は再び始まった。

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