第220話 しんでしまうとは なにごとだ!

 み上がりだから、あまりたくさんは食べられなかった。


 水を飲み過ぎたせいか、それとも胃が弱っているのに食べたからか。


 なんだか、おなかがゴロゴロして痛くなってきた。


 おなかがいっぱいになったら、急にねむたくなった。


 まだ体力が回復かいふくしていないから、体が休みたがっているんだ。


 うとうとし始めると、グレイさんが小さく笑って、ぎゅっと抱っこしてくれる。


『シロちゃん、眠かったら、寝てくれ。大丈夫だ、オレが側にいる。今度は、シロちゃんをひとりぼっちにはしない。だから、安心して寝てくれ』


「ミャ……」


 言われなくても、眠気ねむけには勝てない。


 お父さんやお母さんのふわふわな猫毛ねこげとは、手触てざわりが全然違うけど。


 グレイさんのあったかい毛にもれると、とっても気持ちが良かった。


 落とし穴に落ちるように、ストンと意識いしきがなくなった。





 気が付くと、真っ白な場所にいた。


「また死んでしまうとは何事なにごとだ? 少年」


 脳内に直接、声じゃなくて言葉が流れ込んでくる。


 この感覚は、覚えている。


 あなたは、猫の神様ですか?


「そうだ、私だ。 『次は、死なないように気を付けて生きろ』と、言ったはずだがな、少年」


 すみません、死んだ記憶きおくがないんですが。


 ぼく、また死んじゃったんですか?


「死んだ」


 死因しいんは、なんだったんですか?


猫汎白血球減少症ねこはんはっけっきゅうげんしょうしょう


 猫汎白血球減少症ねこはんはっけっきゅうげんしょうしょう


「猫パルボウイルスに感染かんせんした猫や、その猫の排泄物はいせつぶつから感染かんせんする伝染性胃腸炎でんせんせいいちょうえんだ。少年は、ウイルスが入った水を飲んで、感染かんせんした」


 ウイルスが入った水って……もしかして、あの水たまりですか?


「その通り。感染力かんせんりょくが高く、野生の仔猫こねこ突然死とつぜんしする原因げんいんのひとつだ」


 うわ~……マジか。


 あの時は、のどかわいていて、飲めればなんでも良いと思っていたからなぁ。


 まさか、その水が原因げんいんで死ぬとは思わなかった。


 よりにもよって、グレイさんの腕の中で死んじゃうなんて……。


 グレイさん、めちゃくちゃビックリしただろうな。


 いや、ビックリなんてもんじゃないよね。


 きっと今頃、めちゃくちゃ悲しんで泣いていると思う。


 ごめんなさい、グレイさん。


「して、どうする? 少年」


 どうするって……まさかっ!


 また、生き返らせてくれるのですかっ?


「猫の命は、非常に短い。それに、少年はまだ若い。お前にもう一度、機会きかいあたえよう」


 はい、ありがとうございます、猫の神様っ!


「私はいつでも、少年を見守っているからな。再び、このようなことが起こらぬことを祈っているぞ、少年」


 その言葉を最後に、また意識が飛んだ。

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