第313話 毒入りハーブティー

 ぼくとキャリコは、薬草をいっぱいかかえて集落しゅうらくへ戻って来た。


 薬草をかかえたぼくたちを見て、茶トラ先生がおどろいている。


「シロちゃん、キャリコちゃん、そんなにいっぱいどうしたニャ~?」


「ミャ」


 これで、ハーブティーを作るんです。


「ハーブティーって、なんニャ~?」


「ミャ」


 薬草は別名べつめい、「Herbハーブ


 薬草を乾燥かんそうさせると、茶葉ちゃばになります。


 茶葉ちゃばを水にひたすと、お茶が出来ます。


 このお茶を、「Herbハーブ Teaティー」と呼びます。


 ハーブティーは、飲むと元気になれるお茶です。


「なるほどニャ~。薬草を干してお茶にするなんて、考えもしなかったニャ~。それも、旅の間に知ったのかニャ~?」


「ミャ」


 旅の途中とちゅうで、アオキ先生というお医者さんに教えてもらいました。


「シロちゃんは、旅で色んなことをたくさん経験けいけんして、とってもかしこくなっていくニャ~。本当にすごい子ニャ~」


 茶トラ先生はそう言って、ぼくの頭をでしてめてくれた。


 められると、やっぱりうれしい。


 ぼくはさっそく、キャリコと一緒にってきた薬草を仕分しわける。


 よもぎ青紫蘇あおじそ大葉子おおばこ犬薄荷キャットミント狗尾草ねこじゃらし――


 そこで、『走査そうさ』が発動はつどうした。


警告けいこく


対象たいしょう:セリ科ドクゼリ属ドクゼリ』


概要がいよう全草ぜんそう有毒ゆうどく毒成分どくせいぶんCicutoxinシクトキシンCicutinシクチンふくむ。5g以上の摂取で食べると致死的中毒ちしてきちゅうどくの可能性がある猛毒もうどく皮膚ひふからも、吸収きゅうしゅうされやすい性質せいしつを持つ。誤食ごしょくすると、嘔吐おうと精神錯乱せいしんさくらん呼吸困難こきゅうこんなんを起こして、死にいたる』


 な、なんだってーっ?


 どれがドクゼリか、教えて、『走査そうさ』!


走査そうさ』に教えてもらって、ドクゼリを取りのぞいた。


 ドクゼリの汁が付いているといけないので、薬草を川で洗った。


 どうやら、薬草と間違まちがえて、毒草をってしまったようだ。


 あやうく、毒入りハーブティーを作るところだった。


 教えてくれたおかげで助かったよ、ありがとう、『走査そうさ

 

 薬草摘やくそうつみは、たまにこういうことがあるから、気を付けないとね。


 洗った薬草の水気みずけを切ったら、それぞれ仕分しわけして、長い草でたばねる。


 長い植物のつるを、洗濯せんたく用ロープわりにして、風通しが良い高い木と木の間にる。


 洗濯せんたくロープに、たばねた薬草を干す。


 あとは、カラカラになるまで、お日様と風がかわかしてくれるのを待つだけ。


 集落しゅうらくの猫たちは、風に揺れる薬草を、物珍ものめずらしそうな顔で見上げている。


 猫の習性しゅうせいで、気になってソワソワしているようだ。


 早くも後ろ足で立って、じゃれようといる猫もいる。


 ぼくはみんなに、「これは薬草ですから、絶対に遊ばないように」と注意した。


 ―――――――――――――――――――――


毒芹ドクゼリとは?】


 日本三大有毒植物にほんさんだいゆうどくしょくぶつのひとつ。

 

 若葉わかばの形が、食用のセリにとてもよく似ている。


 しかも、同じようなところにえるので、めちゃくちゃまぎらわしい。


 セリと一緒に間違まちがえて食べて、中毒を起こす人が多い。


 6~7月頃に、白くてちっちゃい可愛い花が咲く。

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