第187話 タンポポの花が咲いたら

「ミャ!」


 ごめん、みんな!


 ぼく、ちょっと、グレイさんとお話ししてくるっ!



 岩壁がんぺきの上にいる猫たちに、そう言いのこすと、ぼくはグレイさんの後を追った。


「グレイさん、待ってミャッ!」


『シロちゃん! オレについてきちゃ、ダメじゃないかっ! 早く集落しゅうらくへ戻るんだっ!』


 ぼくが呼びけると、グレイさんは足を止めてり向いた。


 グレイさんはぼくをしかってくるけど、めちゃくちゃ分かりやすく、しっぽをブンブンっている。


「ぼくもずっと、グレイさんと会いたかったミャ。あったかくなったら、旅へ出て、グレイさんに会いに行こうと思っていたミャ」


『そんなにも、オレのことをっ? オレも会えなかった間、シロちゃんのことをおもい続けていた! やっぱり、オレたちは深く愛し合っていたんだなっ!』


 グレイさんはよろこびとおどろきがじった顔をして、ぼくを抱きめると、顔をペロペロとめ始めた。


 ぼくもうれしくて、グレイさんの毛づくろいをする。


「グレイさん、もう少しあったかくなったら、むかえに来てミャ。お父さんとお母さんと4匹で、一緒に旅へ行こうミャ」


かならず、むかえに行く。愛するシロちゃんと一緒なら、オレはどこまでも行ける』


「グレイさんが一緒に来てくれたら、とっても心強こころづよいミャ」


『オレは全力ぜんりょくで、シロちゃんを守り抜いてみせる。もちろん、お父さんとお母さんもな。だから、安心してついて来てくれ』


「分かったミャ」


『シロちゃんと旅に出られる日を、とても楽しみにしている。それまで、しばしおわかれだ。また会おう』


「うん、待っているミャ」


 グレイさんは、ぼくからはなれて、背を向けて歩き出そうとして立ち止まり、戻って来る。


 首をかしげながら、不思議そうな顔で聞いてくる。


『その【あったかくなったら】ってのは、いつだ?』


 言われてみれば、自分でもかなり適当てきとうすぎたと、反省はんせいする。


「あ~……えっと、そうミャ! タンポポの花がいたら、むかえに来てミャ」


『タンポポ?』


「このくらいの大きさで、ふわふわした黄色い花がくミャ」


 ぼくは自分の手を大きく開いて、タンポポの特徴とくちょう説明せつめいした。


『分かった。そのタンポポという花がいたら、むかえに来る。では、またな、シロちゃん』


 グレイさんはうれしそうに笑うと、はずむような足取あしどりで、走り去って行った。



 ――――――――――――――― 


蒲公英タンポポとは?】


 3月~5月に、黄色い花をかせるキク科の雑草ざっそう


 日本だと、道端みちばた野原のはらなど、どこにでもえている。


 薬草やくそうとしては、健胃胃を元気にする解熱熱さまし利尿作用りにょうさようなどがある。


 花や若葉わかばくきは、でたり、いためたり、天ぷらなどにすると、食べられる。


 っこは、乾燥かんそうさせて、タンポポコーヒーやタンポポ茶にして飲む。


 その辺に生えている野生やせいのタンポポは、おさんぽ中のニャンコやワンコのおしっこがかかっていることが多くてばっちいから、食べちゃダメだよ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る