第167話 シカを狩ろう

 お父さんとお母さんと3匹で、森の中を歩き回って、獲物えものを探す。


 正直、シカやウシみたいな動物だったら、なんでも良い。


走査そうさ』は、ぼくが困った時に、自動的じどうてき発動はつどうすることが多いんだけど。


 狩りの時は、発動はつどうしない。


 それはたぶん、ぼくが「狩りの時は、『走査そうさ』に頼りたくない」と思っているからだ。


 そもそも、『走査そうさ』の発動条件はつどうじょうけんって、なんなんだろう。


走査そうさ』は、「イチモツの木から、与えられた便利な力」と、ぼくが勝手に思い込んでいるだけで、実は良く分かっていないんだよね。


走査そうさ』で、『走査そうさ』を調べてみたら、何が分かるんだろう?


 そういえば、今まで考えたことがなかったな。


 とりあえず、教えて『走査そうさ』 

 

走査そうさとは、対象たいしょうのものをくわしく調べる能力』


猫神ねこがみからさずかった猫のみが、その力を行使使うことが出来できる』


 ぼくが「お医者さんになりたい」と願ったから、『走査そうさ』の能力をさずけられた。


 この力は、ぼくしか使うことが出来ない。


 う~む……目新めあたらしい情報は、何もないな。


 いや、それだけでもう、十分ではあるんだけど。




 ぼくがそんなこと考えていると、お父さんとお母さんが立ち止まり、ぼくを後ろにかばい、木のかげかくれる。


 お父さんが小さな声で、教えてくれる。


「シロちゃん、シンテトケラスがいるニャー」


 見れば、木の葉っぱをモシャモシャと食べている、シカのような動物がいた。


 ちょうど、シカのつのと骨が欲しかったんだ。


「葉っぱを食べて油断ゆだんしているから、今がチャンスニャー。3匹で、一斉いっせいおそうニャー。行くニャーッ!」


 そう言って、お父さんが木のかげから飛び出したので、ぼくとお母さんも後に続く。


 飛び出してきたぼくたちを見て、シンテトケラスは驚いて逃げ出すが、もう遅い。


 お父さんがシンテトケラスの後ろ足にみ付くと、シンテトケラスは痛みでその場にくずれ落ちるように倒れる。


 あとは、急所しゅうしょ首元くびもとらい付いて、仕留しとめるだけだ。


「さぁ、みんなで食べるニャー」


「いただきますニャ」


「ミャ」

 

 れたてのシンテトケラスのお肉は、牛肉みたいで柔らかくて、とっても美味しかったです。




 ―――――――――――――――――――――――――


【Synthetoceras《シンテトケラス》とは?】


 今から2300万年くらい前に、生息せいそくしていたと言われている、ラクダの祖先そせん


 シカっぽい見た目だけど、ラクダの親戚しんせき


 草原や林にんでいた、草食動物そうしょくどうぶつ


 シカのように頭の上に2本のつのえていて、さらに鼻の上にもY字型のつのが生えている。


 鼻の上のつのは、メスへのアプローチ用で、オスにしかえていなかったらしい。


 体長2m、体重は不明。

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