第371話 石焼きキノコ汁と焼き栗

 すごい……焼き石を水に入れたら、一瞬で沸騰ふっとうした。


 でも、めちゃくちゃビックリした。


 木のうつわの中をのぞき込むと、焼き石が水の中でボコボコと音を立てている。


 なるほど、確かにこれならなべを直接火に掛けなくても、お湯が出来る。


 さて、このお湯で何を作ろうかな?


 ハーブティーをれても良いし、キノコ汁も作れそうだ。


 集落しゅうらくの猫たちは、水出みずだしハーブティーをいつも飲んでいる。


 せっかくなら、集落しゅうらくの猫たちが食べたことのないキノコ汁を作ろう。


 キノコ汁は、美味おいしくて体もあったまって、良いことしかない。


 ってきたばかりのキノコを石のナイフで切り、お湯の中へ入れる。


 最初に入れた焼き石が静かになってきたので、新しい焼き石と入れえる。


 また、「ジューッ!」と大きな音がして、お湯がボコボコとき出した。


 すごい音がするし熱くて怖いけど、れれば便利べんりだな。


 焚火たきびで焼き石を作っておけば、あっという間にお湯がく。


 めた石を火の中へ戻せば、何度でもり返し使える。


 焼き石調理法ちょうりほうを思い付いた人は、天才だな。


 キノコがえると、美味おいしそうなにおいがあたりにただよい始める。


 においにられた猫たちが、ぼくの周りに集まってきた。


「にゃんだか、とっても美味おいしそうなにおいがするニャァ」


「シロちゃん、何を作っているニィ?」


「ミャ」


 これは、キノコ汁です。


 めたらくばりますから、もう少し待っていて下さいね。

 

 そうだ、焼き栗が出来ていますから、どうぞ。


「キノコ汁? 焼き栗?」


 猫たちはそろって、不思議そうに首をかしげている。


 だけど、食べたことがないものに、みんな興味津々きょうみしんしんだ。


 ましておいた栗を半分に割って、1匹につき半分ずつ渡した。


「こうやって食べるんですよ」と、ぼくはつめで栗をいて見せる。


 外側のかたい皮は鬼皮おにがわ、内側の縞々しましまの皮は渋皮しぶかわというらしい。


 どちらの皮も食べると消化不良しょうかふりょうを起こすから、丁寧ていねいいた。


 くちに入れると、こうばしくてほっくほくで、とても美味おいしい。


 みんなもぼくの真似まねをして、栗をいて食べ始めた。


「うみゃいうみゃい」と、みんな大喜おおよろこびで食べた。


 だけどすぐに食べ終わって、「もっと食べたい」と、おかわりをしがった。


 美味おいしいものを、たくさん食べたい気持ちは分かるけど。


 栗はカロリーが高いから、食べすぎたらデブニャンになっちゃうぞ。


 デブニャンはそれはそれで可愛いけど、体には良くないからね。


 あとで、グレイさんにも焼き栗を持って行って食べさせてあげよう。


 栗を食べている間にキノコ汁がめたので、葉っぱのお皿にぎ分けてみんなにくばった。


 キノコ汁も、「うみゃいうみゃい」と美味おいしそうに食べてくれた。


 みんな、よろこんで食べてくれて良かった。

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