第282話 猫が猫舌の理由

 ぼくはバーベキューみたいに、キノコを細い枝に刺して、串焼くしやきを作って、焚火たきびで焼いてみた。


 ぼくの串焼くしやきを見て、アグチ先生や他の猫たちも真似まねをする。


 パチパチと火が燃えるにおいと、キノコが焼ける美味おいしそうなにおいが辺りに広がる。


 しばらくすると、キノコはこんがりと焼き上がった。


 すぐに焼き立てを食べたいところだけど、猫は熱いものが食べられない。


 食べられる温度になるまで、待つしかない。


 もともと、猫は熱いものを食べない。


 猫は熱いものを食べる必要がないから、猫舌ねこじたになるんだ。


 猫も人間と同じように、赤ちゃんの頃からあったかいキャットフードを食べさせていたら、猫舌ねこじたにならなかったという面白い実験結果がある。


 猫を猫舌ねこじたにしていたのは、飼い主だったという話もある。


 だけど、猫が熱いものを食べられるようになっても、良いことは何もない。


 むしろ、熱いものを食べられるようになった方が危ない。


 熱いものを食べると、舌やのど火傷やけどしてしまう。


 火傷やけどは、炎症えんしょうを起こしている状態と同じ。 


  熱い物を食べるのが好きな人は、口腔癌こうくうがん咽頭癌いんとうがん食道癌しょくどうがんになりやすいと言われている。




 少し待って、食べられそうなくらい冷めたところで、キノコにみついた。


 美味おいしい!


 ふっくらジューシーで、少しげたところはカリカリでこうばしい。


 焼きキノコって、こんなに美味おいしいのか。


 そういえば、人間だった頃も、焼きキノコって食べたことがなかった気がする。


 初めて食べた、焼きキノコの美味おいしさに感動した。


 こんなに美味おいしい焼きキノコが食べられるなら、頑張がんばって火を起こして良かったって思える。


 集落しゅうらくの猫たちも、お父さんもお母さんも「うみゃいうみゃい」と、よろこんで食べている。

 

 こんなに美味おいしいなら、グレイさんの分も焼いて、あとで食べさせてあげよう。


 焼きキノコを食べたアグチ先生がニコニコしながら、ぼくに話し掛けてくる。


「このキノコ、とっても美味おいしいにゃ~。この火があれば、夏まで待たなくても、いつでもキノコをジュージューして食べられるにゃ~。ぜひとも、この火の作り方を教えて欲しいにゃ~」


 ぼくは美味おいしい焼きキノコを食べさせてもらったお礼に、アグチ先生に火の起こし方と火の消し方を教えた。


 火の起こし方と消し方は、かならず両方教えなければいけない。


 消し方を知らないと、火事になっちゃうからね。


 火の消し方は、簡単だ。


 上から、土を掛けてめてしまえば良い。


 その後、たくさんの水をければ、完璧かんぺき


 火を起こしたら、火からはなれないこと。


 最後まできちんと責任を持って、火の始末しまつをすること。


 これが、「正しく火を使いこなす」ということなんだ。

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