第316話 ふたりかくれんぼ

 お日様が西の空へしずんで真っ暗になった頃に、集落しゅうらくをこっそりと抜け出した。


 グレイさんは、イチモツの集落しゅうらく番犬ばんけんみとめられているけれど。


 天敵てんてきのトマークトゥスのグレイさんを、良く思わない猫は多い。


 お父さんとお母さんも、最初はビビり散らかしていたけどね。


 今は、グレイさんをぼくの友達として、受け入れてくれている。


 だから、グレイさんに会う時は、ひとりで行くことにしている。


 野生やせいのオオカミは、「夜行性やこうせい


 昼間ひるま巣穴すあなで寝ていて、お日様がしずんだころに起きてくる。


 オオカミの睡眠時間すいみんじかんは約12~15時間で、猫と同じくらい寝る。


 オオカミの子孫しそんである犬が、「昼行性ちゅうこうせい」になったのは、飼い主さんの生活に合わせているからなんだよ。


 室内飼しつないがいの猫も、飼い主さんに合わせて昼行性ちゅうこうせいになるらしい。


 猫も夜行性やこうせいだと思われているけど、実は「薄明性はくめいせい


 薄明性はくめいせいは、早朝そうちょう夕暮ゆうぐれの薄暗うすぐらい時間に活動かつどうすること。


 野生やせいの猫は、獲物えものの行動時間に合わせて狩りをするからなんだ。


 猫は明るい昼間ひるまにお昼寝をして、真っ暗な夜もしっかり寝る。


 だからぼくは、猫たちが寝静ねしずまった夜に、グレイさんと会うことにしている。


走査そうさ』の案内にしたがって、グレイさんの元へ走っていく。


「グレイさ~ん!」


『おお、シロちゃん。ちょうど、鳥を狩ったところだから、一緒に食べないか?』


「ありがとうミャ、いただきますミャ」


 グレイさんの足元あしもとに倒れていたのは、 Ornimegalonyxオルニメガロニクス(体長約1m、体重約9kgの巨大フクロウ)だった。


 オルニメガロニクスは、猫の天敵てんてきである猛禽類もうきんるい(ワシやタカの仲間)。


 フクロウも、夜行性やこうせいの動物。


 前にも、グレイさんが狩ってくれたオルニメガロニクスを食べたことがある。


 フクロウは空を飛ぶ鳥なので、体のほとんどが羽根はねで、食べられる肉の部分ぶぶんはとても少ない。


 フクロウも狩られてしまえば、ただの鳥肉だな。


 オルニメガロニクスも、猫に食べられるとは思わなかっただろう。


 食べ終わったところで、ぼくはグレイさんに話し掛ける。


「ぼくとキャリコが薬草狩りをしていた時、見ていたミャ?」

 

『ああ、気付いてくれてうれしかったぞ。一緒にいた猫も、なかなか可愛かった。もちろん、オレのシロちゃんの方がずっと可愛いけどな』


「キャリコは気付かなかったみたいだけど、ぼく以外の猫はみんな、グレイさんを見たら怖がっちゃうから、見つからないように気を付けてミャ」


『そうだったな、すまない。集落しゅうらくから猫が出てくると、可愛くてつい見たくなってしまうんだ』


「じゃあ、上手じょうずかくれられるように、かくれんぼしようミャ」

 

『かくれんぼとは、なんだ?』


 ぼくは、グレイさんにかくれんぼの遊び方を教えた。


 じゃんけんで、鬼と子を決める。


 鬼が目をつぶって10数える間に、子はどこかへかくれる。


 数え終わったら、鬼は子を探す。


 見つかったら鬼の勝ち、見つけられなかったら子の勝ち。


 今回はかくれる練習なので、ぼくが鬼で、グレイさんが子。


 ぼくとグレイさんは、ひと晩中ばんじゅう、かくれんぼをして遊んだ。


 おかげで、グレイさんはかくれるのが上手じょうずになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る