第206話 旅の延期

 茶トラ先生が、イチモツの集落しゅうらくの猫たちを集めて、イヌノフグリの集落しゅうらくの猫たちのお引っ越しの話をしてくれた。


 事情じじょうを話せば、集落しゅうらくの猫たちも、「そういうことなら、仕方ないニャー」と、受け入れてくれた。


 しばらくすると、お父さんとお母さんが、イヌノフグリの集落しゅうらくの猫たちを連れて帰って来た。


「ただいまニャー」


「シロちゃん、もう帰って来たのニャ?」


 ぼくは、お父さんとお母さんに駆け寄る。


「ミャ!」


 お父さん、お母さん、おかえりなさい!


 茶トラ先生や集落しゅうらくの猫たちに、お話しはしておいたよ。


 みんな、イヌノフグリの集落しゅうらくの猫たちを、受け入れてくれるって。


「それは、良かったニャー」


「シロちゃん、ありがとうニャ」


 ぼくの話を聞いて、お父さんとお母さんは、うれしそうに笑った。


 ふたりは、イヌノフグリの集落しゅうらくの猫たちを、茶トラ先生のところへ連れて行った。


 イヌノフグリの集落しゅうらくの猫たちは、そろって茶トラ先生に挨拶あいさつをする。


「あなたが、イチモツの集落しゅうらくおさですニィ?」


 茶トラ先生は、猫たちをやさしい笑顔でむかえる。


「イヌノフグリの集落しゅうらくの皆さん、ようこそいらっしゃいましたニャ~。私が、イチモツの集落しゅうらくおさの茶トラですニャ~。このたびは、災難さいなんでしたニャ~。どうぞ、ここでゆっくりと、ケガをいやして下さいニャ~」


おさ、我々を受け入れてくれて、ありがとうございますニィ」


「本当に、助かりますニャン」


おさ、これからよろしくお願い申し上げますニャア」


「ミャ」


 みんなのケガは、ぼくが治療ちりょうしておいたよ。


 あとは、毎日、ヨモギの薬を飲ませて、ゆっくり休ませれば元気になると思うんだ。


 猫たちを、茶トラ先生にお願いしても良い?


「シロちゃん、いつもありがとうニャ~。あとは、私に任せてニャ~」


 茶トラ先生は、ぼくの頭を優しくでながら続ける。


「シロちゃんたちは、旅の途中とちゅうで引き返して来たニャ~? また、すぐ旅へ出掛けるのかニャ~?」 


 茶トラ先生に問われて、悩む。


 ここで、茶トラ先生に全部丸投げして、すぐに旅へ出てしまうのは、無責任むせきにんな気がする。


 イヌノフグリの集落しゅうらくの猫たちを、お引っ越しさせると決めたのは、ぼくだし。


 イヌノフグリの集落しゅうらくの猫たちも、知らない土地に連れて来られて、すぐには馴染なじめないだろうし。


 もともとここにんでいる猫たちも、他所よそから来た猫たちを受け入れるのには、時間が掛かると思う。


 みんなが仲良く出来るかっていう、心配もあるんだよね。


 しばらく、集落しゅうらくとどまって、様子を見よう。

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