第205話 集落へ先回り

 自信満々じしんまんまんで言った通り、グレイさんの足はめちゃくちゃ速かった。


 ぼくが走るよりも、ずっと速い。


 周囲しゅうい景色けしきが、目でとらえられない速さで流れていく。


 おかげで、お父さんとお母さんが引き連れた、イヌノフグリの集落しゅうらくの猫たちを先回さきまわりすることが出来た。


 グレイさんは、ゆっくりと速度そくどを落として、イチモツの集落しゅうらくより少し前で立ち止まって、ぼくをろしてくれた。


『シロちゃん、ここで良いか?』


「うん、ありがとうミャ。グレイさん、足が速くてカッコイイミャ」


『カッコイイか……ふふっ、またオレにれ直したか。オレが必要な時は、いつでも呼んでくれ。愛するシロちゃんの為なら、いくらでも力になろう。それでは、またな』


「グレイさん、またミャ」


 グレイさんは満足げに笑うと、スキップでもしそうな軽い足取りで、どこかへ走り去った。


 グレイさんはカッコイイし、優しいんだけど、愛が重すぎるんだよなぁ……。


 ぼくは、毛づくろいをして出来るだけグレイさんの臭いを消してから、集落しゅうらくへ入った。


 たったの1日で帰ってきたぼくを見て、集落しゅうらくの猫たちは不思議そうに首をかしげている。


「あれ? シロちゃん、もう帰ってきたニャ~?」


「なんか、あったのかニャア?」


「何か忘れたニャン?」


 ぼくは、茶トラ先生の元へ駆け寄って、話し掛ける。


「ミャ」


 すみません、茶トラ先生、お話があります。


「シロちゃん、どうしたニャ~?」  


「ミャ」


 おとなりのイヌノフグリの集落しゅうらくが、ヒアエノドンのれにおそわれたそうです。


 残念ながら、多くの猫たちが食べられ、傷付けられ、くなってしまいました。


「それは、可哀想にニャ~……でも、おとなり集落しゅうらくじゃ、私にはどうすることも出来ないニャ~」 


「ミャ」


 お父さんとお母さんが、イヌノフグリの集落しゅうらくの猫たちを連れて、もうすぐここへやって来ます。


 みんな、ケガを負っていて、弱っています。


 そこで、茶トラ先生にお願いがあります。

 

 イヌノフグリの集落しゅうらくの猫たちを、イチモツの集落しゅうらくで受け入れてくれませんか?

 

「おとなりの猫たちが、こっちへ向かっているのニャ~?」


「ミャ」


 はい、イヌノフグリの集落しゅうらくの猫たちを、助けてあげて下さい。


「そうニャ~、困った時は助け合いニャ~。私もみんなから助けられてばかりだからニャ~。分かったニャ~、イヌノフグリの集落しゅうらくの猫たちを、うちで受け入れるニャ~」


 茶トラ先生は少し考えた後、ニッコリと笑ってうなづいてくれた。

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