第239話 ナズナの集落

 それからしばらく、旅の疲れをいやす為、集落しゅうらくでお世話になることにした。


 コメツブツメクサの集落しゅうらくでは、全然休めなかったからね。


 といっても、あまり長くいることは出来ない。


 集落しゅうらくにいる間、グレイさんがひとりぼっちになってしまうから。


 グレイさんは、「オレのことは気にしないで、ゆっくりしてくれ」と言うけど。


 グレイさんは、さびしがり屋さんだから、ションボリしているのが、めちゃくちゃ分かりやすいんだよね。


 仕方がないので、お父さんとお母さんには集落しゅうらくに残ってもらって、ぼくはグレイさんの側にいることにした。


 集落しゅうらくの猫たちに見られないように気を付けながら、一緒にお散歩したり、狩りをしたりして、ふたりでのんびりと過ごした。



 数日後、おさのハイトビに、集落しゅうらくを出ることを伝えた。


 すると、集落しゅうらくの猫たちが全員集まって、お見送りしてくれた。


「お医者さんがた、あらためてお礼を言わせて下さいにゃあ。あなたがたのおかげで、集落しゅうらくが救われましたにゃあ。本当に、来てくれてありがとうございましたにゃあ」


「ミャ」


 どういたしまして。


「今回のことで、お医者さんの大事さが、とっても良く分かりましたにゃあ。これからは、薬草で病気やケガを治せるようになったから、安心ですにゃあ」


 それは良かったです。


 ですが、薬草でも治せない病気やケガもたくさんあります。


 どんな病気もケガも、寝ることが一番の治療法ちりょうほうです。


 具合が悪い時は、いっぱい寝て下さいね。


「分かりましたにゃあ」


 おっと、忘れていた。


 この集落の名前は、なんて名前なのですか?


「ナズナの集落しゅうらくですにゃあ」


 ぼくたちの足元には、細長い草が風に吹かれて、ゆらゆらと揺れている。


 ひょろ長い緑色のくきに、ちっちゃいハート型の葉っぱがいっぱい付いていて、すぐに見分けられる。


 これ、ナズナって言うんだ?


 ぼくはずっと、「ぺんぺん草」って名前だと思っていた。


 ナズナは、薬草なのかな?


 教えて、『走査そうさ


対象たいしょう:アブラナ科ナズナ属ナズナ』


薬効やっこう解熱ねつさまし下痢げり便秘べんぴ止血しけつ生理不順せいりふじゅん子宮出血しきゅうしゅっけつ利尿りにょう慢性腎炎まんせいいえん、むくみ、目の痛みや充血じゅうけつ高血圧こうけつあつ


 ナズナも薬草だったのか、ありがとう、『走査そうさ


 ぼくたちは、ナズナの集落しゅうらくの猫たちに見送られて、再び旅立った。


 ――――――――――――――――


なずなとは?】


 別名「ぺんぺん草」


 食べられる雑草で、春の七草ななくさのひとつとして有名。


 日本では、1年の無病息災むびょうそくさいを願って、1月7日に七草粥ななくさがゆにして食べる。


 お正月に、ごちそうをたくさん食べたり、お酒をいっぱい飲んだりして、弱った胃腸いちょうを休める意味もある。


 そこら辺に生えている野生のナズナは、ばっちいから食べちゃダメだよ!

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