第202話 死にゆく猫たち

 イヌノフグリの集落しゅうらくへ戻る頃には、お父さんとお母さんが、たくさんのアロエとヨモギを集めてくれていた。


「ミャ!」


 お父さん、お母さん、アロエとヨモギをってきてくれて、ありがとう!


「どういたしましてニャー」


「いつもみたいに、ヨモギのお薬を作ればいいのニャ?」


「ミャ」


 うん、いつもお手伝いしてくれて、助かるよ。


「じゃあ、頑張がんばってお薬作るニャー」


「シロちゃんは、みんなの治療ちりょうをお願いニャ」


「ミャ!」


 ぼくは、猫たちの傷にアロエの汁をっていく。


 そのあと、お父さんとお母さんが作ってくれたヨモギの薬を、猫たちに飲ませた。


 猫たちが「痛いニャー」「早く助けてニャー」と、しきりに鳴いている。


 とても可哀想かわいそうで、全員助けてあげたいと思う。


 だけど、治療ちりょうしても、助からない猫たちがいる。


 助からないと分かっていても、出来る限りのことはしてあげたかった。


 重傷じゅうしょうの猫たちが、「のどかわいたニャー……お水が飲みたいニャー……」と、かぼそく鳴いている。


 大量失血たいりょうしっけつしている時に、水を飲ませると死んでしまう。


 何故、水を飲ませると死んでしまうのか?


 胃に何かが入って来ると、それを消化しようと胃に血が集まる。


 すると、血が一番必要なのうに血が足りなくなって、脳死のうししてしまうんだ。


 治療ちりょうしても、助からないと分かっているなら、最期さいごに水くらい飲ませたい。


 かわきに苦しんで死ぬよりも、水を飲ませて安らかに死なせたい。


 ぼくは、葉っぱで作ったお皿に水をんで、猫たちに飲ませた。


「お水、美味おいしいニャー」と言い残して、猫たちはくなっていった。


 ぼくは、泣きながら猫たちを看取みとった。 


 そうして、集落しゅうらくの猫たちの半数が、命を落とした。


 集落しゅうらくの猫たちの治療ちりょうが終わった後。


 お父さんとお母さんが、くなった猫たちのおはかってくれた。


 亡くなった猫たちを丁寧ていねいに1匹ずつめて、上に墓石はかいしを置いた。


 生き残った猫たちは、墓にすがりついて泣いていた。


 灰色猫が、泣きながらぼくに教えてくれる。


おさ勇敢ゆうかんな猫たちがおとりになって、それ以外の猫たちはみんな、必死に逃げたニィ……それでも、ヒアエノドンのれに追われて、食べられてしまったニィ……」


 そういえば、集落しゅうらくおさのクロブチネコはいなかった。


 おとりになったから、真っ先に食べられてしまったのか。


 もう一度、あの陽気ようきおさに会いたかったな。

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