第201話 救命活動

 ぼくは、イヌノフグリの集落しゅうらくをざっと見渡みわたす。


 集落一面しゅうらくいちめんに咲いていたと思われるイヌノフグリの花は、グチャグチャにらされていた。


 らされた草花くさばなの上に、たくさんの猫が倒れている。


 猫の数を数えてみると、以前来た時よりも、あきらかに数がっていた。


 いなくなった猫たちは、ヒアエノドンに食べられてしまったのだろう。


 1匹ずつ『走査そうさ』をして、助けられそうな猫を探す。


 深い傷をった猫たちは、残念ながら、助けられそうにない。


 傷が浅い猫たちは、治療ちりょうすれば、助けられる。


 ヒアエノドンに傷付けられて、大量失血たいりょうしっけつ感染症かんせんしょうで、すでにくなっている猫もいた。


 猫の数が多いから、傷薬きずぐすりはヨモギよりアロエの方が良さそうだ。


 ヨモギは、葉を叩きつぶしてペースト状にする必要があるけど。


 アロエは、葉を折るだけですぐ使える。


 感染症対策かんせんしょうたいさく抗菌薬こうきんやくとして、ヨモギもあった方が良いか。


「ミャ!」


 お父さんとお母さんは、ヨモギとアロエを探して集めておいて!


 ぼくは、グレイさんにこのことを伝えてくるっ!


「分かったニャー」


「いっぱい集めるニャ」


 お父さんとお母さんはヨモギとアロエをりに、ぼくはグレイさんの元へ走った。


 グレイさんは、さっきわかれた場所でせをして待っていた。


「グレイさん!」


『なんだ? シロちゃん、そんなにあわてて何かあったのか?』


「グレイさんが、イチモツの集落しゅうらくから追い払ったヒアエノドンが、イヌノフグリの集落しゅうらくおそったみたいミャ!」


 ぼくの話を聞いて、グレイさんはとても驚いた。


『なにっ? それは、オレのせいなのかっ?』


「グレイさんは、何も悪くないミャ。ただ、ヒアエノドンがおそ集落しゅうらくを変えただけミャ」


『そうか。だが、その集落しゅうらくの猫たちは可哀想かわいそうだな。オレに、何か出来ることはあるか?』


「傷付いた猫たちがいるから、血のにおいで天敵てんてき近寄ちかよって来る可能性かのうせいがあるミャ。グレイさんは、集落しゅうらくの近くで見張みはりをして欲しいミャ」


『分かった。これ以上、犠牲ぎせいを出さないように、オレが集落しゅうらくを守ろう』


「グレイさんがいてくれれば、安心ミャ」


『ああ、まかせてくれ』


 グレイさんは、鼻をフンスフンスと鳴らして、り切っている。


 ぼくは、集落しゅうらくの近くまで、グレイさんを案内した。


 集落しゅうらくの少し手前てまえで立ち止まり、グレイさんに「ここにいて欲しい」とたのんだ。


 トマークトゥスのグレイさんは、集落しゅうらくへ入ることが出来ないから。


『シロちゃんと集落しゅうらくの猫たちは、オレが守ってみせる』


「ありがとうミャ。ここはよろしく頼むミャ」


『シロちゃんも頑張って、猫たちを助けてやってくれ』


「分かったミャ」


 グレイさんをそこに残して、ぼくはイヌノフグリの集落しゅうらくの中へと戻った。

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