第158話 食べられるもの

 ぼくは集落しゅうらくを飛び出すと、『走査そうさ』の案内にしたがって走り出した。


目的地周辺もくてきちしゅうへん到着とうちゃく


 その言葉を最後に、『走査そうさ』の案内は終わった。


 どうやら、この辺りにトマークトゥスがいるらしい。


 キョロキョロと周りを見回すと、1匹のトマークトゥスが草むらの中で、ぐったりと倒れていた。


 イチモツの集落しゅうらくからここまで、約1kmほどはなれている。


 たぶん、偵察部隊ていさつぶたいは、集落しゅうらくの周りしか見回りをしていないから、気付かなかったんだ。


 そろりそろりと近付いて、様子を見る。


 一見いっけんすると寝ているみたいで、ちゃんと息もしているから、生きているっぽい。 


 あらためて見ると、やっぱりトマークトゥスって大きいなぁ。


 ぼくが生後3ヶ月の仔猫こねこサイズだから、なおさら大きく見えるのかもしれないけど。


 大きさを比べたら、軽く3倍以上はあるぞ。

 

 トマークトゥスの顔を、こんなに近くで見たのは初めてだ。


 こうして見ると、大きい犬って感じ。


 猫は可愛いけど、犬はカッコイイな。


 おっと、こんなことしている場合じゃなかった。


走査そうさ』は、『栄養失調おなかがすいて死にそうにより、意識不明気を失っている』と言っていた。


 このまま放っておいたら、死んじゃう。

 

 じゃあ、ごはんを食べさせてあげれば良いんだよね。


 トマークトゥスって、何を食べるの?


おもに肉食。有蹄類シカ・ヤギ齧歯類ウサギ・ネズミ魚類ぎょるい、一部の野菜と果物くだもの


 やっぱり、肉が好きなのか。


 猫と違って、魚や野菜や果物も食べられるのか……うらやましい。


 猫って意外いがいと、食べられるものが少ないんだよね。


 味覚みかくが人間と違うから、果物を食べても美味おいしいと思えないんだ。


 魚は一応、美味おいしく食べられるけど、体が受け付けてくれなくて、食べると病気になっちゃう。


 人間だった頃は、なんでも美味しく食べられたのに……。


 でも、歯がないと、食べられないよね?


『トマークトゥスは、食べ物をまずに丸呑まるのみする習性しゅうせいの為、歯がなくても食べることは可能』


 なるほど、猫と同じで、まずにみ込んじゃうタイプか。


 猫の歯も、獲物えものの肉をみ切る為にあるんだよ。


 ってことは、飲み込めるサイズに切ってあげれば、食べられる。


 だったら、ぼくでも狩れそうな小動物を狩って、小さく切って食べさせてあげよう。


 トマークトゥスが食べられそうな果物も、あったら探そう。


 トマークトゥスが、どれだけの量を食べるかは分からないけど。


 体が大きいから、たくさん食べるよね?


 出来るだけ、たくさん狩った方がいいかな?


 もし、トマークトゥスが目を覚ましても、歯が折れているから、ぼく自身がおそわれる心配はないだろう。


 よし、さっそく、獲物えものを狩ってこよう!

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