第196話 ボス猫の条件

 集落しゅうらくおさ(リーダー)、つまり、「ボス猫」になるには、さまざまな条件がある。


 ①勇気があること。


 敵をおそれず、逃げるどころか、みずから立ち向かっていく勇気を持っていなければならない。


 ②信頼しんらいされていること。


 仲間をまとめる役割やくわりがあるから、みんなから信頼しんらいされていなければならない。


 ③精神メンタル肉体フィジカルが強いこと。


 集落しゅうらくを守る為には、精神メンタル肉体フィジカルも強くなければならない。


 ④縄張なわば意識いしきが強いこと。


 誰よりも集落しゅうらくを愛し、仲間を守りたい気持ちが強くなければならない。


 ⑤おそれられること。


 仲間から一目置いちもくおかれる(誰よりもすぐれていると思われる)くらい、顔や体が大きく、強くなければならない。


 ⑥やさしいこと。


 誰かが困っていたら、すかさず助けるやさしさを持っていなければならない。


 ⑦安心させられること。


 いつも仲間や周囲しゅういに気を配り、みんなが安心してらせる環境かんきょうを作らなくてはならない。


 などなど、理想りそうのボス猫になるには、たくさんの条件があるんだ。


 ボス猫=オスというイメージがあるけど、条件さえたしていれば、オスメスは関係ない。


 おさがいないと、集落しゅうらくの猫たちは安心してらすことが出来ない。


 だから、おさくなったら、なるべく早く、次のおさを決める必要があるんだ。


 集落しゅうらくの猫たちは、「誰が、おさ相応ふさわしいか」と、頭をなやませているようだ。


 ぼくはだまって、みんなの話を聞いていた。


 正直、集落しゅうらくを守ってくれるなら、誰でも良いと思っている。


 それに、ぼくが選ばれることは、絶対ないと分かっている。

 

 だってぼくは、全然条件をたしていないからね。


 生まれつき病弱びょうじゃくで、体が小さい。


 精神メンタル肉体フィジカルも弱いから、逆にみんなから守られている。


 集落しゅうらくは愛しているけど、仲間から信頼しんらいはされていないんじゃないかな?


 だから、選ばれないに決まっている。


 そう思っていたら――


「シロちゃんは、どうニャ~?」と、茶トラ先生が笑いながら言った。


 そのひとことで、みんなの視線しせんがぼくに集まる。


 予想外よそうがい展開てんかいに、めちゃくちゃビックリした。


「ミャッ?」


 ぼ、ぼくですかっ?


「シロちゃんはとっても良い子だし、お医者さんとしても優秀ゆうしゅうで、体が小さくても頑張がんばって狩りへ行くし、みんなから信頼しんらいされているニャ~。それに、あのトマークトゥスをしたがえる、強さと勇気も持っているニャ~。だから、私はシロちゃんを推薦おすニャ~」


 茶トラ先生の話を聞いて、他の猫たちが「ニャるほど、確かに」と納得なっとくした顔で何度もうなづいている。


 いやいや、ぼくは集落しゅうらくおさになる気なんて、全然ないんですけどっ?

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