第237話 医者の成り手不足

「にゃにゃ~、おどかすようなことを言っちゃって、すみませんでしたにゃあ。ですが、お医者さんが欲しいのは本当ですにゃあ」


 おさのハイトビは、明るく笑いながら、軽い口調で言った。


 しかし、お父さんとお母さんは、まだ警戒けいかいしている。


 ぼくを抱っこしたまま、はなしてくれない。


 何かあったら、今すぐにでも逃げ出しそうな雰囲気ふんいきだ。


 仕方がないので、抱っこされたまま、おさと話をすることになった。


「ミャ」


 ぼくたちは旅の途中とちゅうで、いくつも集落しゅうらくたずねましたが。


 お医者さんがいる集落しゅうらくの方が、めずらしいですよ。


「にゃるほど。どこの集落しゅうらくも、お医者さんの手不足てぶそく深刻しんこくなんですにゃあ」


 おさは、困ったようにため息を吐く。


 そこでぼくは、ニッコリと笑う。


「ミャ」


 ぼくは、そんな猫たちをすくう為に旅をしているのです。


 この集落しゅうらくの皆さんに、さっき使った薬の作り方を教えようと思っています。


「にゃんとっ? それは、本当ですにゃあ? とってもありがたいですにゃあっ! さっそく、教えてもらっていいですかにゃあ?」


 はい、集落しゅうらくの猫たちを、集めてもらえますか?


「もちろんですにゃあっ!」


 おさ大喜おおよろこびで、集落しゅうらくの猫たちを全員集めてくれた。


 今回は、教える薬草の数が多い。


 まずは、基本となる薬草の見分みわけ方を教える。


 薬草と毒草どくそうを正しく見分みわけられないと、意味がないからね。


 続いて、薬の作り方と用法使いかた用量使うりょうを教えた。


 用法ようほう用量ようりょうを守らないと、どんな薬も毒となる。


 ヨモギは、って良し、食べて良しの万能薬ばんのうやくだけど。


 秋は、花粉症かふんしょう原因植物げんいんしょくぶつになるから使えない。


 アロエは、とっても優秀ゆうしゅうな傷薬であり、かゆみ止めとしても使えるけど。


 猫がアロエを食べると、おなかがぽんぽんいたいいたいぺいんぺいんになるので要注意ようちゅうい


 人間は食べられるけど、猫の体には毒なんだよね。


 ニガヨモギは、おなかにみついた寄生虫きせいちゅう効果こうかがあるけど、苦くて飲みにくい。


 シロバナムシヨケギクは、花の部分だけを乾燥かんそうさせて、粉にしないと使えない。 


 ――とまぁ、薬草はたくさんの種類と使い方があるから、教える方も大変だった。


 ついでに、松の葉を使ったノミブラシの作り方と、使い方も教えた。


 ひと通り教えた後、おさが頭を抱えていた。


「にゃにゃ~……とってもむずかしいですにゃあ。これ、全部、おぼえるのですかにゃあ……?」


「ミャ」


 今、教えたのは、ほんの一部なんですけどね。


「これで、一部にゃあっ? お医者さんになるのは、大変なんですにゃあ……」


 おさは驚き、また再び、頭を抱えた。

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