第177話 ウソは自分も相手も騙す

 ぼくとお父さんとお母さんだけでは、大きなオルニメガロニクス(足長あしながフクロウ)を食べきれない。


 仕方がないので、ぼくたちはオルニメガロニクスを担いで、グレイさんの元へ戻ることにした。


 戻って来たぼくたちを見て、グレイさんが不思議そうに首をかしげる。


『おや? シロちゃん、どうした?』


「グレイさん、ごめんなさいミャッ!」


 ぼくはあやまりながら、グレイさんの胸に飛び込んだ。


『なんだなんだ? 何かあったのか?』


 グレイさんは、心配そうにぼくをめて、なぐめてくれた。


 なぐさめられると、さらに申し訳ない気持ちが大きくなって、悲しくて涙が止まらなくなる。


 ぼくは、グレイさんの胸に顔を押し付けて、泣き続けた。


『何があったか分からないが、泣きたければ泣けば良い。泣きたい時は、いつでもオレの胸に飛び込んで来い。いくらでも、なぐさめてやるからな』


 グレイさんは優しい声で言い聞かせながら、ぼくを抱き締めてくれた。 



 思い切り泣いて、気持ちが落ちいたところで、ぼくは事情じじょうを説明することにした。


 ウソをくのは、良くない。


 ウソをくことは、自分も相手もだますこと。


 あとで、ウソだったとバレた時に、おたが傷付きずつく。


 だったら、ヘタにかくすよりも、正直に話した方が良いと思う。


 それにぼくは、ウソをくのが、とてもヘタクソなんだよね。


「あの……オルニメガロニクスは、ぼくたちの天敵てんてきだから、ぼくたちがきらいな臭いがするミャ。だから、集落しゅうらくの猫たちは、誰も食べられなかったミャ……ごめんなさいミャ」


『……なるほど、天敵てんてきにおいか。確かに、それじゃ食べられないよな』


 グレイさんは悲しそうな笑みを浮かべ、納得なっとくした様子でうなづいた。


 そんなグレイさんが可哀想かわいそうで、ぼくはあわててお礼を言う。


「あ、でも、ぼくとお父さんとお母さんは、おなかいっぱい食べたミャ! ごちそうさまでしたミャッ!」


『そうか。シロちゃんたちは、食べてくれたのか。気をつかわせてしまって、すまなかった。あとは、オレが食べるよ』


「じゃあ、切るから、ちょっと待っててミャ」


『ありがとう。いつも面倒掛めんどうかけて、悪いな』


 ぼくは、首から下げていた石のナイフをはずす。


 毎回、川まで石を拾いに行って、石のナイフを作るのは面倒臭めんどうくさい。


 だから、植物のつるで石のナイフをむすんで、ネックレスのように首から下げている。


 走る時にジャマだけど、こうしておけば、すぐに使えて便利べんりなんだよね。


 さっそく、石のナイフでオルニメガロニクスを叩き切っていく。


 しばらくして、出来上がったブツ切り肉の山を、グレイさんは美味しそうに食べてくれた。

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