第180話 一緒に

『そうだ! 集落しゅうらくを追い出されたら、オレと一緒に来い! ふたりで、新しい縄張なわばりを探そうっ! ふたりなら、きっとどんな困難こんなんも乗り越えられる! シロちゃんは、オレが絶対守るから安心してついて来てくれっ!』


 グレイさんはしっぽをブンブン振りながら、興奮こうふんした口調くちょうで言った。


 うわぁ~……そう来たかぁ。


 いや、グレイさんなら、そう言う気がしていた。


 だって、グレイさんは、ぼくのことがめちゃくちゃ大好きだから。


 前に、『シロちゃんがいてくれれば充分じゅうぶん』と、言っていた。


 例え、世界の全てを敵に回しても、ぼくだけは守ってくれそう。


 気持ちはうれしいけど、愛が重すぎるんだよなぁ。

  

 だけど、それじゃ、お互いの為にならない。


 ぼくはグレイさんを選んだら、集落しゅうらくを追い出される。


 グレイさんはぼくと一緒にいたら、つがい(夫婦)もれも作ることが出来ない。


 本来、トマークトゥスは猫を食べるものだから。


 やっぱりぼくたちは、一緒にいちゃダメなんだ。


 言いたくないけど、言わなくちゃ。


 ぼくは、心の底から申し訳ないと思いながら、おことわりする。


「グレイさん、ごめんなさいミャ。ぼくは、グレイさんと一緒に行けないミャ」


何故なぜだっ? オレたちは、愛し合っているじゃないか! 愛し合うもの同士、一緒にいるべきだっ!』


「ぼくは、集落しゅうらくから、離れたくないミャ」


『じゃあ、オレもここにいる!』


「グレイさんがいたら、ぼくは集落しゅうらくから追い出されちゃうミャ!」


『……何? シロちゃんが集落しゅうらくから追い出される理由は、オレのせいなのか?』


「そうミャ……」


『そうか……オレのせいなのか』


 グレイさんは、悲しそうな目でぼくを見つめる。


『オレは、オレのせいでシロちゃんを悲しませたくない。オレがいなくなれば、シロちゃんは集落しゅうらくから追い出されなくて済むんだな?』


「そうミャ」


『ならば、オレがを引こう。オレのせいで、迷惑めいわくけて悪かった。短い間だったけど、猫のお友達が出来て、とても幸せだった。本当に、今までありがとう』


 グレイさんはそう言って、優しく笑った。


 グレイさんとは、これでおわかれなんだ。


 ここでおわかれしたら、きっともう二度と会えない。


「グレイさん、おわかれしたくないミャッ!」


『オレだって、わかれたくないっ!』


 ぼくは最後に、グレイさんにギュッと強く抱き着いて泣いた。


 グレイさんもボロボロと大粒おおつぶの涙を流しながら、ぼくを抱き返してくれた。

 


―――――――――――

 ※諸事情しょじじょうにより遅くなりまして、誠に申し訳ございませんでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る