第159話 狩りと料理

 倒れているトマークトゥスをその場に残して、ぼくでも狩れそうな小動物を探す。


 狩りは、自分の実力で狩りたいんだよね。


走査そうさ』にお願いすれば、どこに、どんな動物が、何匹いるかまで、正確に分かるんだけど。


 それじゃ、攻略本こうりゃくぼんを読みながらゲームやるみたいで、つまらない。


 自分の耳で獲物えものの足音を聞き、鼻で臭いをぎ分け、かん気配けはいを感じる。   


 目で動きをとらえ、獲物えものすきを突いて、追い詰めて仕留しとめる。


 自分自身の力で、狩りをした時の達成感たっせいかんが、最高なんだよ。


 自分で狩った肉の味は、ひと味違う。


 これが、正しい狩りというものだと、ぼくは思っている。


 出来る限り、狩りで『走査そうさ』には頼りたくない。


 これは、ぼくなりのこだわり。


 食べられる野草や果物の見分け方は難しいから、必要な時は頼るけど。




 そんなこんなで、パラミス(体長30~60cmのネズミ)を10匹ほど狩ってきた。


 あとは、食べられる薬草もってきた。      


 トマークトゥスが食べられそうな木の実も探したんだけど、見つからなかった。


 それもそのはず、美味しい実がる季節は、ほとんど夏~秋。


 冬にる実は、見た目は綺麗きれいだけど、毒があって食べられないものが多い。


 冬の木の実を食べられるのは、鳥くらい。  


 鳥だけが冬の木の実を食べられるのは、たねを遠くへ運んでもらう為なんだよ。




 さて、今度はパラミスを食べられる大きさに切らなきゃ。


 まずは、パラミスを解体かいたいする為に河原かわらへ運ぶ。


 続いて、河原かわらで拾った手のひらサイズの石をぐ。


 河原かわらの石は、水を掛けながら平たい石にこすり付けてぐと、石の刃物が出来る。


 さすがに、包丁みたいに切れ味は良くないけど。


 石の刃を使って、パラミスをひとくちサイズに小さく切っていく。


 包丁みたいに切る感じじゃなくて、骨ごと叩き切るって感じ。


 なんだか、料理しているみたいな気分。


 そういえば、家庭科の調理実習ちょうりじっしゅう以外では、料理ってしたことないかも。


 おうちでも、したことはなかった。


 猫になってから、石で薬草を叩いて薬を作るようになった。


 でも、料理と薬を作るのは、全然違うよね。


 よし、パラミスをひとくちサイズに切れたぞ。


 あとは、大きな葉っぱにパラミスの肉をせて運んで、トマークトゥスに食べさせるだけだ。


 もうすぐ食べさせてあげるから、あとちょっと待っててね。




【Paramys《パラミス》とは?】


 今から約6000万年くらい前に、生息せいそくしていたといわれている、体長30~60cmくらいのネズミ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る