第265話 お医者さんの後継者問題

 お茶工房ちゃこうぼうを見学させてもらった後、アオキ先生に質問する。


「ミャ?」


 アオキお父さんは、なんでお医者さんになったんですか?


「ボクは、生まれつき体が弱くて、病気がちだったにゃお。ずっと、お医者さんのお世話せわになっていたにゃお。だから、ボクもお医者さんになって、誰かを救いたいと思ったにゃお」


「ミャ」


 ぼくも、アオキお父さんと同じです。


 お医者さんとして、ケガや病気で苦しむ猫たちを救いたいと思っています。


「シロちゃんも、お医者さんになりたいにゃお? とっても良い子にゃお」


 アオキ先生は優しく微笑ほほんで、ぼくの頭をでてくれた。


 なりたいんじゃなくて、もうすでにお医者さんなんだけどね。  


 前に訪れた集落しゅうらくでは、お医者さんとして見られていたけど。


 お医者さんじゃないぼくは、ただの仔猫こねこ


 しかも今はケガで、自分で動くことも出来ない。


 ぼくがお医者さんだと言っても、誰も信じてくれないだろう。


「ミャ?」


 アオキお父さんは、なんでそんなにお茶にくわしいんですか?


「ボクがお医者さんになりたいと言ったら、お医者さんが教えてくれたにゃお」


 お医者さんがいる集落しゅうらくには、だいたい先代のお医者さんがいる。


 ぼくも、ミケ先生からお医者さんの知識を教えてもらった。


 ミケ先生は、ヨモギしか知らなかったけどね。


走査そうさ』から教えてもらった薬草の知識は、ミケ先生にも共有きょうゆうした。


 色んな薬草を教えたけど、結局、使いれているヨモギを使うことが多い。


 ぼくも、ヨモギとアロエを使うことが多いかな。


 ほとんどのケガや病気は、ヨモギで治るからね。


「ミャ?」


 先代のお医者さんは、どちらにいらっしゃいますか?


「前のお医者さんは、とっくに亡くなってしまったにゃお」


 アオキ先生は、さみしそうにうつむいた。


 アオキ先生が生まれた頃からお世話になっていた猫なら、年齢的にもう亡くなっているか。


 野生の猫の命は、あまりにも短い。


 次のお医者さんを育てないと、お医者さんがいない集落しゅうらくになってしまう。


「ミャ?」


 アオキお父さんの次に、お医者さんになってくれる猫はいるんですか?


「ハチミケさんが、薬草にくわしいにゃお。ここにある干してある薬草は全部、ハチミケさんがって来てくれた薬草にゃお」


 ハチミケってのは、ケガをしたぼくを見つけてくれたハチワレミケネコか。


 ぼくのお母さんになると、言っていたメスネコだ。


 ハチミケにも、話を聞いてみたいな。

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