第373話 これから

 冬が来る前に、薬草やキノコを出来るだけったり、防寒対策ぼうかんたいさくを考えたりして、せっせと冬支度ふゆじたくをしていると。


 お父さんとお母さんがそろって、真剣しんけんな顔つきでぼくに話し掛けてくる。


「シロちゃん、大事なお話しがあるニャー」


「ミャ?」


「私たちも年を取って、そろそろ旅をするのがつらくなってきたニャー」


「シロちゃん、旅はもうやめましょうニャ。これからはイチモツの集落しゅうらくで、みんなとのんびりらしましょうニャ」


 ふたりはやさしく笑って、ぼくを前後からはさんで抱き締めてくれた。


 ぼくもお母さんの胸に顔をめて、ギュッと抱き返した。


 ああ、そうか。


 野生の猫の寿命じゅみょうは、3~4歳。


 長くても、5歳と言われている。


 お父さんとお母さんも、もうそんな年齢なんだ。


 年齢的にも体力的にも、限界なのかもしれない。


 これまでぼくたちは何度も、死にそうな目にった。


 ぼくが無茶ばかりするから、ふたりにはかなりのストレスを掛けただろう。


 ふたりのやさしさに甘えて、たくさん無理をさせてしまった。


 ふたりとも、心身共しんしんともに疲れ切っている。


 これ以上、ふたりを旅へ連れて行くことは出来ない。


 お父さん、お母さん、今まで本当にありがとう。


 苦労ばかり掛けてしまって、ごめんなさい。

 

 今までワガママを言った分、これからは親孝行おやこうこうするよ。


 だから今度は、お父さんとお母さんがぼくに甘えてね。


 集落しゅうらくおさの茶トラ先生も、だいぶお年だ。


 おさとお医者さんの両方をつとめるのは、大変だろう。


 茶トラ先生にもお世話になったから、恩返おんがえしをしないとね。


 これからはぼくが、イチモツの集落しゅうらくのお医者さんとしてみんなの健康けんこうを守るよ。


 ぼく自身も旅を通してさまざまなことをまなび、お医者さんとして成長したと思う。


 これからは、旅の経験を生かして、イチモツの集落しゅうらくの猫たちの役に立ちたい。


 ぼくを尊敬そんけいしてくれている、お医者さんの卵のキャリコもいる。


 ぼくが、キャリコを次のお医者さんに育てなければならない。


 これからもきっと、ぼくのやるべきことがたくさんあるに違いない。


 もしかしたらこれから一生、イチモツの集落しゅうらくから出ないかもしれない。


 だけどある日、ふとした時に旅へ出たくなるかもしれない。


 また旅へ出たいと思うその日まで、ぼくはイチモツの集落しゅうらくの猫だ。



         【第2部 おしまい】



 ―――――――――――――――――――――――――――


 長い間、お付き合い下さいまして、誠にありがとうございました。


 皆様に応援おうえんして頂いたおかげで、ここまで続けられました。


 大変ありがたいことにコメントまで頂けて、本当にはげみになりました。


 いくら言葉をくしても、感謝しても感謝しきれません。


 心から厚く御礼おんれい申し上げます。


 なお、第3部を書く気はあるのですが――


 諸事情しょじじょうにより、お引っ越しをしなければなりません。


 引っ越し作業であわただしい為、しばらくお休みさせて下さい。


 それではまた、次の作品でお会いしましょう。


 秋冷しゅうれいこう、皆様におかれましては、体調をくずされないよう、くれぐれもお気を付け下さいませ。


 末筆まっぴつではございますが、皆様のご健康けんこうとご多幸たこうを心よりお祈りいたします。


                   橋元 宏平

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ねこねこ仔猫なお医者さん 転生して仔猫になったぼくが夢の獣医になる話 第2部 橋元 宏平 @Kouhei-K

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