第241話 共に生きる

 グレイさんから、トマークトゥスの話をくわしく聞いた。


 トマークトゥスの生態せいたいは、オオカミやイヌとほとんど同じ。


 4匹以上のれで行動こうどうし、れごとに縄張なわばりを持つ。


 れは全員、血がつながった家族。


 いつもれで行動し、助け合うものらしい。


 リーダーのつがい(夫婦)が一番偉いちばんえらくて、順位じゅんいが決まっている。


 一番偉いちばんえらつがいが、αアルファ


 順位じゅんいの高いものからβベータΓガンマと続き、一番下がΩオメガ


 順位じゅんいは、年齢とし立場たちばで決まるらしい。


 2歳くらいになるとれから出て、一匹狼いっぴきおおかみとなり、つがいを探す。


 トマークトゥスもイヌと同じように、縄張なわばりにマーキングをする。


 マーキングのにおいで、年齢とし性別せいべつ、体の大きさまで分かるというから、おどろきだ。


 縄張なわば意識いしきがとても強いので、時々、縄張なわばりあらそいが起こる。


 あらそいをける為に、出来る限り、他のれの縄張なわばりには入らないように気を付けているそうだ。



 グレイさんがいたれは、お父さんとお母さんと兄弟4匹の合計6匹だったという。


 グレイさんは、れの中で一番年下だったから、Ωオメガだったそうだ。


 そういえば、グレイさんも一匹狼いっぴきおおかみで、つがいを探しているって、言っていたよね?


 ずっとぼくたちと一緒にいるけど、つがいを探さなくていいのかな?


 まさか、本来の目的を忘れちゃったなんてことはないよね?


 もしかしたら、猫が好きすぎるあまり、つがいを作れないのかもしれない。


 普通のトマークトゥスは、猫を食べるもんね。


 だから、つがいあきらめるしかなかったんだ。 


 猫を好きなったばっかりに、つがいを作れないなんて、可哀想かわいそうに……。 


 でも、グレイさんは、ちっともさびしそうじゃないんだよね。


「猫と旅をするのが夢だった」って言っていたし、むしろ幸せそう。


 たまたまぼくが『走査そうさ』を使えたから、トマークトゥスの言葉を理解りかい出来てしまった。


 かなわないはずだった夢が、かなってしまった。


 それで、大好きな猫と共に生きる道を選んだ。


 猫と旅をするトマークトゥスなんて、グレイさんしかいないと思う。


 ぼくもトマークトゥスと一緒にいたら、つがいなんて作れない。


 そもそも、仔猫こねこから成長しないぼくを、つがいとして選んでくれる猫なんていない。


 でも、不幸ではない。


 大好きなお父さんとお母さんとグレイさんが、いつも側にいてくれる。


 グレイさんみたいな親友が、これから先、出来るとも思えない。


 もう充分じゅうぶん幸せだから、これ以上をのぞむのは贅沢ぜいたくってもんだ。 




 ぼくは、グレイさんにニッコリと笑い掛ける。


「グレイさん、これからもずっと一緒ミャ」


『ああ、オレたちの愛は永遠だ』


 グレイさんもニッコリと笑い返してくれて、おたがいに体をすり寄せた。 



 ―――――――――――――


 ※諸事情しょじじょうにより、遅くなりまして、申し訳ございません。

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