第262話 オッドアイのシロネコ

 わぁ……青い目と黄色い目オッドアイのシロネコだ。


 この世界で、初めて見た。


 人間の頃でも、画像や動画でしか見たことがない。


 オッドアイって、めちゃくちゃめずらしいんだよね。


 じっと見つめていると、オッドアイのシロネコは困った顔で笑う。


「にゃはははっ、そんなにこの目が気になるにゃお? ボクは生まれつき、目の色が違うにゃお。気持ち悪いにゃお?」


「ミャ」


 いえ、とっても綺麗きれいで、見惚みとれてしまいました。


「そんなことを言われたのは初めてで、ちょっとれるにゃお。ボクの名前は、青黄アオキ。この集落しゅうらくの医者にゃお」


「ミャ!」


 あなたが、この集落しゅうらくのお医者さんですか!


 ぼくを助けてくれたのも、アオキ先生ですか?


「そうにゃお、ボクが治療ちりょうしたにゃお。それで、君の名前は?」


「ミャ」


 アオキ先生、助けてくれて、ありがとうございました。


 腕の良いお医者さんというのは、アオキ先生だったのですね。


 ぼくの名前は、シロです。


「シロちゃんは、親猫おやねこと生きわかれたと聞いているにゃお……」


 アオキ先生は、悲しそうな目でぼくを見つめると、そっと抱き寄せてくれた。


 ぼくの頭を、優しくでながら続ける。


「でも、大丈夫にゃお。今日からボクが、シロちゃんのお父さんになるにゃお」


「ミャッ?」


 どうしてそうなったっ?


 アオキ先生の話によると、サビネコから、「大きな鳥におそわれて、親猫おやねこは殺され、仔猫こねこだけ生き残った」と、伝えられたそうだ。


 伝言ゲーム失敗。


 アオキ先生に、「ぼくのお父さんとお母さんは生きているから、ケガが治ったら探しに行く」と、正しい情報を伝えた。


 アオキ先生は、少し残念そうな顔をした後、にっこりと笑い掛けてくる。


「じゃあ、集落しゅうらくにいる間だけ、『お父さん』と呼んでにゃお」


 アオキ先生は、ぼくに「お父さん」と呼んで欲しいらしい。


 助けてもらったおんもあるし、呼ぶくらいは良いかな。


「アオキお父さんミャ」


「シロちゃん!」


 アオキ先生はうれしそうに、ぼくをギュッと抱き締めた。


 抱き締められると、体中の傷がズキズキと痛み始めた。


「ミャ……ッ!」


「ごめんごめん、痛かったにゃお? すぐに薬を作るから、待っていなさいにゃお」


 アオキ先生はぼくをはなすと、いそいそと薬草を取りに行った。


 ―――――――――――――――――


虹彩異色症こうさいいしょくしょう(オッドアイ)とは?】


 遺伝子的いでんしてき欠陥けっかんにより、左右の目の色が違う病気。


 人間より、犬や猫の方が発症はっしょうしやすい。


 特に、白猫が発症はっしょうしやすいと言われている。


 青い目の方の耳が、聴覚障害ちょうかくしょうがいを持っている場合がある。


 黄色い目の方の耳は、ちゃんと聞こえている。


 日本では、黄色と青色の目を持つ猫を、「金目銀目きんめぎんめ」と呼ぶ。


 めずらしいので、「幸運を運んでくる猫」と、大切にされることが多い。

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