ねこねこ仔猫なお医者さん 転生して仔猫になったぼくが夢の獣医になる話 第２部

第296話 猫が食べられる魚

　この世界にも、雨季（うき）（雨が多く降（ふ）る季節（きせつ））がある。

　だけど去年は、こんなに降（ふ）らなかった気がする。

　今年は、降（ふ）る日も降（ふ）る量も多いようだ。

　何日も何日もずっと、雨が降（ふ）り続けている。

　このところずっと、お日様（ひさま）を見ていない。

　この時季（じき）のお日様（ひさま）は、日差（ひざ）しが強いけど。

　そろそろ、お日様（ひさま）が恋（こい）しい。

　今、ぼくたちがいる巣穴（すあな）は、グレイさんが小高（こだか）い丘の上に掘（ほ）ってくれたから、安全だけど。

　長雨（ながあめ）で、近くの川が溢（あふ）れて、大洪水（だいこうずい）を起こしている。

　低い場所は、茶色い湖（みずうみ）のようになっていた。

　雨が止（や）んでも、洪水（こうずい）の水が引くまで旅はお休みだ。

　早くイチモツの集落（しゅうらく）へ帰りたいのに、これではどこにも行けない。

　集落（しゅうらく）の猫たちは、無事だろうか。

　みんな、洪水（こうずい）の被害（ひがい）に遭（あ）っていないと良いけど。

　雨で冷えるから、火を絶（た）やさないように、薪（まき）を足（た）す。

　最近は、雨で濡（ぬ）れた枯（か）れ枝や枯草（かれくさ）を拾って来て、焚火（たきび）で乾（かわ）かして、薪（まき）にしている。

　お父さんとお母さんは、気象病（きしょうびょう）でずっと寝ている。

　ぼくも頭痛（ずつう）が酷（ひど）いし、古傷（ふるきず）がズキズキと痛む。

　気象病（きしょうびょう）は低気圧（ていきあつ）が原因（げんいん）だから、雨が止（や）まないと治らない。　

　いつになったら、雨は止（や）むのかなぁ……。

　深々（ふかぶか）とため息を吐くと、火が大きく揺（ゆ）れた。

　バシャバシャという水音と共に、狩りに行っていたグレイさんが帰ってきた。　

『シロちゃん、ただいま！』

「グレイさん、おかえりなさいミャ」

『川が溢（あふ）れて、魚がいっぱい流れてきたから、拾って来たぞ』

　グレイさんは、３０ｃｍくらいの大きな魚を４匹持って帰ってきた。

　猫は、魚を食べられないんじゃなかったっけ？

　これ、なんていう魚？

　教えて、『走査（そうさ）』

『対象（たいしょう）：サケ目サケ科タイヘイヨウサケ属アマゴ』

『概要（がいよう）：高蛋白（こうたんぱく）低カロリーの白身魚（しろみざかな）は、犬も猫も食べられる』

『チアミン欠乏症（けつぼうしょう）の原因となるチアミナーゼは、加熱（かねつ）すれば不活性化する（なくなる）』

『アニサキスは熱に弱い為、加熱（かねつ）すれば死滅する（しぬ）』

　そうか、火を通せば、犬も猫も魚を食べられるんだ。

　焼けば、アニサキス食中毒（しょくちゅうどく）も防（ふせ）げる。

　そういえばサケは、キャットフードにも良く使われている。

　やったー！　猫になって初めて、魚が食べられるぞっ！

　さっそく、アマゴを串（くし）に刺（さ）して焼き始めた。

　―――――――――――――――

【似嘉魚（アマゴ）とは？】

　３～９月の間だけ、釣（つ）ることが出来る川魚（かわざかな）。

　渓流（けいりゅう）ルアーフィッシングのターゲットとして人気。

　同じ魚でも、川から海へ行くものは、サツキマス。

　川にずっといるものは、アマゴと呼ばれる。

　塩焼きにすると、川魚（かわざかな）らしい、あっさりとした味で美味（おい）しい。

【チアミン欠乏症（けつぼうしょう）とは？】

　青魚（あおざかな）には、ドコサヘキサエン酸（DHA）やエイコサペンタエン酸（EPA）などの、不飽和脂肪酸（ふほうわしぼうさん）が豊富（ほうふ）に含（ふく）まれている。

　人間が不飽和脂肪酸（ふほうわしぼうさん）を食べると、脳や神経組織（しんけいそしき）の機能を活性化させる（元気にする）作用がある。

　しかし、不飽和脂肪酸（ふほうわしぼうさん）は、猫の体には良くない。

「黄色脂肪症（イエローファット）」になる恐れがある。

「黄色脂肪症（イエローファット）」は、おなかに「しこり」が出来る病気。

　発熱（はつねつ）、腹痛（ふくつう）、食欲低下（しょくよくていか）、元気がなくなるなどの症状（しょうじょう）が現れる。

【アニサキス食中毒（しょくちゅうどく）とは？】

　Anisakis（アニサキス）は、魚に棲（す）みつく寄生虫（きせいちゅう）。

　感染（かんせん）すると、激（はげ）しい腹痛（ふくつう）と嘔吐（はきけ）などの症状（しょうじょう）が現れる。