第285話 守りたい未来があるから火の用心

 グレイさんは、生まれて初めて熱いものを食べて、舌を火傷やけどした。


「痛い痛い」と言うグレイさんの為に、大急ぎで川まで水をみに行った。


 葉っぱのお皿に水をんで、グレイさんの前に差し出す。


「ごめんなさいミャ、グレイさん。このお水で、舌を冷やしてミャ」


『いったい、どういうことだ? 肉に、舌をまれたぞ?』


 グレイさんは混乱している様子で、水をガブガブと飲んだ。


 そんなグレイさんを見て、めちゃくちゃ申し訳ない気持ちになる。


「焼いたばかりのお肉はとっても熱いから、舌を火傷やけどしちゃうミャ」


火傷やけどっていうのは、この舌がピリピリ痛むことか?』


「そうミャ。ちゃんと冷まして食べていれば、火傷やけどしなかったはずミャ。それを教えなかった、ぼくが悪いミャ。ごめんなさいミャ……」


 一生懸命いっしょうけんめいあやまるぼくに、グレイさんはやさしく言い聞かせてくる。


『大丈夫だ、痛みは少しずつ収まってきたから。それにオレは言われていても、待ちきれずに食べていたと思う。だから、そんなにあやまらないでくれ』


「ありがとう、グレイさん……」


 それから、ぼくとグレイさんは、焼き鳥が冷めるまで待った。


 さわれるくらいの温度になったところで、ふたりで焼き鳥を食べた。


 美味おいしい! 焼くと全然違う味になるんだっ!


 生肉は柔らかくて食べやすいけど、焼くとごたえが良い。


 むと、旨味うまみたっぷりの肉汁にくじるがあふれ出す。


 こんがり焼けた鳥の皮は、パリパリで香ばしい。


 グレイさんも焼き鳥を気に入ったらしく、「美味うま美味うまい」と、よろこんで食べている。


『さっき食べた肉とは、全然違うぞっ!』


「これが、焼き鳥ミャ」


『うぅむ……焼き鳥は美味おいしいが、火は熱くて怖いな』


 グレイさんはおびえた顔で、火からかなりはなれた場所にいる。


 火にれるどころか、火を恐れるようになってしまった。


 これは、ぼくの不注意ふちゅういによるものだ。


 火は使い方を間違えると、火傷やけどをしたり、最悪の場合、命をうばったりすることがある。


 火の取り扱いには、十分に気を付けないとね。


 肉を全部焼き終わった後、たくさんの水を掛けて、しっかり消火した。


 その後、グレイさんにお願いして、土にめてもらった。


 これで、良しと。


 焼き上がった焼き鳥は、集落しゅうらくまで運び込んだ。


 明日の朝、おなかをゴロゴロ壊しているピーちゃんから治った猫たちに、食べてもらおう。


 やることやったら、急に疲れがおそってきて、ねむくなってきた。


 ぼくが大きなあくびをすると、グレイさんも釣られてあくびをした。


 ぼくとグレイさんは顔を見合わせて笑うと、身を寄せ合う。


「いっぱい頑張がんばって、疲れたから寝るミャ。おやすみなさいミャ」


『ああ、ゆっくりお休み、シロちゃん』


 そう言って、グレイさんはぼくを包み込むように抱き締めてくれた。


 グレイさんのあったかい毛に包まれると、ストンとねむりに落ちた。

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