第24話

 二、三週間ほど飲まず食わず、睡眠時間もゼロで戦い続け、ようやく訪れた平穏の中で眠りについていたところを『神威』という最高級の目覚ましで叩き起こされ、キリエの大魔法を幾つも初手に喰らった魔王。


「既に魔族は我一人。だが、良い……ここで汝を喰らえば我に勝ちもあるというものッ!適当に人間を魔族へと変え、今度こそ我が世界の王となる!」

 

 だが、それでも魔王は悠然に力強い二本足で地面を踏みしめ、僕らの前に立っていた。


「戦闘方法は前に決めていた通りにね?」


 僕の命令に従い、予め決めておいた通りに並び、戦闘態勢を取っていたみんなへと声をかける。


「了解」


「行くよ、シャルル」


「はい!」

 

 僕とシャルルは遊撃。

 リーリエたちからは離れ、縦横無尽に魔王へと攻撃を仕掛けていく。


「……」


「せいや、ほいや、えいやぁぁぁあ!」


「……ッ」

 

 魔王は僕とシャルルの連携バッチリな攻撃に押され続ける。

 ……大丈夫、魔王にもしっかりと疲労は蓄積している。


「……やっかい、なぁッ!!!」

 

 魔王の大振りの一撃を用意に回避する僕とシャルルは同じタイミングで一歩踏み出し、大振りの攻撃で隙を晒した魔王へと自分の手にあった剣を突き刺す。


「アレスッ!」


「わかっている」

 

 魔王を突き刺した剣から手を離して下がったシャルルへと次元魔法を使って収納していた剣を投げて渡し、シャルルと同じく魔王を突き刺した剣から手を離して下がった僕も新しい剣を取り出す。


「……ッ」


 大方、自分の体を貫かせることで出来る一瞬の隙を狙ってのカウンターを目論んでいた魔王は僕とシャルルが思い切りよく刺した瞬間に全力逃亡したせいでその目論見が外れ、忌々しそうな表情を浮かべる。


「吹き飛ばせ!」

 

 そして、そんな魔王へとキリエの魔法が直撃し、その体を震わせる。


「……ッ!!!」

 

 それを受け、魔王は僕とシャルルから一旦視線を外し、リーリエたちの方へと視線を向けて突撃。

 全員まとめて吹き飛ばそうと魔法を発動しながら突っ込んでいく。


「行かせませんッ!」


「ぬぅ!?」

 

 だが、その魔王の突撃はラレシアの盾によって完全に防がれる。


「『カースド・ライトニング』」


「『マジックキャンセル』」

 

 キリエを狙って発動した魔王の魔法はリーリエの魔法によって無効化され、そんな魔王の背中を僕とシャルルが貫く。


「……クソったれが」

 

 背中を刺した剣から手を離し、新しく手にした剣を使って魔王へと襲い掛かる僕とシャルルに、いそいそと逃亡するリーリエたち。

 翻弄され続ける魔王はただただ眉を顰め、怒りを露わにすることしか出来なかった。

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