第4話

 フォーエンス家に戻ってきた僕はかなり忙しくなる……はずだった。

 学園に入学する前に貴族として覚えておきたい礼儀作法やら基礎学力から実技やら。

 学んでおかなければならない様々なことがあったのだが……。


「うぅむ……教えること、あまりありませぬな」

 

 僕の教育係となった老執事は僕の成績を見て言葉を漏らす。

 基礎学力、実技ともに僕は言うことなしの年齢不相応な成績を叩き出した。

 そして、礼儀作法は若干怪しいところがあったが、一時間ほどやればこの年齢までに覚えなきゃいけない礼儀作法はほとんどマスターした。


「一体何をしましょうか……礼儀作法に関してはいっぺんに詰め込むようなものでもございませんし」


「やることないなら自学で良い?」


 やりたいことなら基本的にいくらでもある。

 どれだけ強くなろうとも僕という存在の運命を考えると決して強さが足りない。まで足りない。


「いえ、申し訳ありませんがそれは了承しかねます。当主様よりお坊ちゃんの行動は一挙手一投足全て自由なく監視するように言われてまして」


「……自分への束縛ひどすぎるでしょ。まぁ、自業自得ではあるけど」


 年単位の家出という特大前科持ちなのだ。

 妥当な判断である。


「ふむぅ……どうしましょうか」


「いえ、ここからは私がお教えいたしましょう」


 一体いつからいたのか。

 困っている老執事に対してレリシアが声をかける。

 ……僕の知らぬ間に家改造されて、秘密の通り道出来上がっている?


「やりすぎぬようお願いいたしますぞ?」


「わかっていますよ」

 

 さも当たり前のように僕を抱えるレリシアが老執事の言葉に頷く……おかしいな。家に帰ってくるまでの間に僕はそう簡単に抱えられないほど大きくなるはずだったのに。

 今も普通に抱きかかえられている。

 おかしいな。七不思議かな?

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