第27話

 未だ婚約者の決まっていない僕への注目度……同い年の女子からの注目度はかなり高い。

 僕は世界各国の有力者の娘に囲まれながらパーティーの時間を過ごしていた。

 雰囲気としては実に和やかであり、今のところは何の問題も起きることなく進んでいた。


「テメェ……今、なんつった?ァアッ!?」

 

 だがしかし、そんな平和な雰囲気だったパーティー会場に一つの怒号が響き渡る……あぁ、結局面倒ごとは起こるのか。


「このような場で怒鳴り散らすなど、穢れた亜人には品と言うものがないのか?」


「……ッ!元はと言えばテメェが!」

 

 言い合いが発生している方へと視線を送れば、そこでは一人の亜人の少年と人族である一人の少年が睨み合っていた。

 

「汚い唾を飛ばしてほしくないのだがね」

 

 睨み合っている二人のうちの人族の少年は瞳に宿る侮蔑の色を隠そうともせず自分の前にいる亜人の少年を見下している。

 

 彼はトンロ皇国のオーエンス公爵家の長男であるガイ・オーエンス。

 人族至上主義を掲げる一神教であるブレノア教を国教とするトンロ皇国の人間らしく亜人へと差別的な対応を取り、亜人の少年を怒らせたのだろう。


「何だとッ!」

 

 オーエンス卿の前に立つ亜人の少年は侮蔑的な視線にも負けず、声を張り上げている。

 

 怒鳴り声をあげ、オーエンス卿を前にして怒りを隠そうともせず頭の上の耳と下半身から伸びる尻尾を逆立てている少年はロンドル。

 亜人の一種たる獣人の国であるリステリン獣国の王族であり、ライオンの性質を色濃く受け継ぎ、王族の中でも突出した力を持つ第三王子である彼はその立場に似合わない汚い言葉で怒鳴り散らし続けている。


「ちょっと、失礼」


 各国の可愛い女の子たちに囲まれたちょっとしたハーレム気分を味わってちょっと気分が良かった僕は……それが台無しにされ、ため息を吐きそうになるのを我慢して口を開く。


「どうぞ」

 

 僕は自分を囲んでいる少女たちに道を開けてもらい、場を乱すような口論を続けている人達の方へと近づく。

 

 このまま言い争いを放置しているわけにもいかないだろう。

 子供と子供の言い争いに大人がでしゃばるのも大人げない……ここは僕が収めるのが最善だろう。


「何を騒いでいるのかね」

 

 二人の元へと近づいた僕は口を開き、口論へと割って入った。

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