第28話
バチバチに睨み合っていた二人の口論に割って入った僕に当事者である二人だけでなく周りで静かに見定めていた周りの大人たちの視線が向けられる。
「僕たちのように各国から選ばれた子供たちが互いの武を競い合う学校対抗試合。たとえ種目上は争い合うことになるとしても、共に立場を忘れて汗を流し、友好を深め合う平和な聖典だ。それに対してくだらぬ口論で水を差すなど……どういうつもりたるか?」
僕は声に威圧感を滲ませながら言葉を告げる。
「……も、元はと言えばこいつが悪いんだッ!」
ロンドル殿下はオーエンス卿を指差しながら叫ぶ。
「下賤なる亜人風情が私に対して指を差すなど……」
「オーエンス卿。ここで亜人差別は厳禁であるはずだが?国際マナーも知らないと?」
「国際マナーなど、神の御心の前では」
「神の御心は世界を包んでいない。ブレノア教が強い影響を持っているのはトンロ皇国くらいであろう?」
「……ッ!神の御心を知らぬ野蛮人がァッ!」
「国際マナーも知らず、このような場で怒鳴り声を上げるオーエンス卿こそ野蛮人ではないかね?」
僕はオーエンス卿を前にして一切引くこと亡く押し問答を続ける。
「惰弱で脆弱たる亜人をこのような場に招待することこそおかしいのだ。最初期は亜人を学校対抗試合を呼んでいないだろう!」
「で、あるのならば何処とも知らぬ辺境のバルバロイも呼ばぬのが道理ではないかね。オーエンス卿……今すぐにでも辺境の大地に帰るか?」
「……ッ!貴様ッ!!!我らを愚弄する気か!」
「他者を愚弄しておいて、己だけは愚弄されないなど、随分と驕った考えを持っておるのだな」
「亜人は我ら人種に及ばぬ劣等種。惰弱で脆弱な者どもを愚弄して何が悪いか!」
「似たようなやり取りを繰り返してどうするというのか。我はバルバロイたるオーエンス卿に負けるつもりなどない。惰弱で脆弱なものを見下して良いのであれば私がオーエンス卿を愚弄されても許されるだろう」
僕は徹底的にオーエンス卿をバルバロイと下に見ながら話を続けた……ちょっとやり方ミスったかもしれん。
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