第29話
ブレノア教はかなり選民思想強めの宗教である。
自分が神の庇護下にある優良な存在であると信じているであろうオーエンス卿は僕に愚弄され、下を向いて殺気を漏らしながら体を小さく震わせる。
「この私が、惰弱で脆弱だと……お前よりも?」
絞り出すように呟かれるオーエンス卿の言葉。
「ふむ?何を当たり前のことを聞くのかね」
それに対する僕の返答はその怒りへと更に火をくべるようなものであった。
すると、何をとち狂ったのかオーエンス卿は弾かれたように動き出し、殺意を込めた手刀を迷いなく僕に突き付けようとする。
「やりすぎだ」
だがしかし、それは僕が対処するよりも先に別の男性に止められる。
「おぉ、これはこれは……お初目にかかります。オーエンス公爵」
僕は自分の目の前に立ち、オーエンス卿の凶行を止めた壮年の男性。
オーエンス公爵家現当主、サザンドロ・オーエンスへと僕は深々と頭を下げる。
「うむ。お初であるな。丁寧な礼、感謝する……我が息子が迷惑をかけたな」
それに対してオーエンス公爵は軽い会釈を返してくれる……流石にオーエンス公爵の動揺を誘うことは出来なそうだな。
とはいえ、この場にとうとう大人であり現役の当主が出張ってきたという事実は大きい。
もう格付けは終わったかな?
「いえいえ、これくらい大したことではありません」
「そうか……それでは私たちはここら辺で失礼させてもらう」
オーエンス公爵家一行は僕の元から去っていく。
「……学校対抗試合で、覚えていろ」
最後の最後にオーエンス卿が捨て台詞を残して。
……うーん、最終的には良かったかな?うん。
煽りすぎた気もするが、最終的には向こうが手を出そうとして親が出てくる事態になった。
格付け的には問題ないだろう……これで学校対抗試合で僕が負けたら信じられないくらいダサいけど。
「加勢に入ってくれて、ありがとな!」
オーエンス公爵家一行が去るのを眺めていた僕へとロンドル殿下が後ろから声をかけてきた。
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