第24話

「強すぎですよ……アレス様。正直に言ってここまでとは思いませんでしたよ」


「そうですね。まさか全員で襲い掛かっても何もさせてもらえずフルボッコに去れるとは思わなかったです」


「自分で言うのもなんだけど、君たちとは次元が一個くらい違うからね。既にお父様より強いしね、僕」

 

 僕VSクラスの全員という前代未聞の対決が行われた後、クラスメート全員で近くの焼き肉店へとやってきていた。


「えっ!?あのフォーエンス家当主様よりですか!?」


「うん。そうだよ」

 

 ノブレスオブリージュ。

 前世の世界にあった高い社会的地位には義務が伴うという考え方同様、この世界でも貴族はありとあらゆる特権の代わりに力でもって民草を救うという義務を負うという考えが存在する。


 正直に言って貴族は普通に執務で忙しいので、普段はその役目を果たせないのだが、戦争時や強力な魔物が出てきたときにはすべての貴族がノブレスオブリージュの考えに従って率先して力を振るう。


 そのため、貴族は等しく強者である必要があり、生まれながらの才と最高峰の教育を受けることによって貴族に相応しき力を得る。

 僕のお父様だってとんでもない強者であり、それよりも僕が強いと聞けば周りが驚くのも当然だろう。


「むぅ……私とか最後なんで負けたのかわかりませんでした」

 

 シャルルが少しばかり頬を膨らませながら口を開く。


「まぁ、相手の意識の隙を縫うあのやり方はちょっと大人げなかったかな?と思うけど、完勝したかったから仕方ない。あれは一対一の戦闘にしか使えないし、シャルルには似合わないだろうから教えないけど、対処法なら今度教えるよ」


「ありがとうございます!」

 

 僕からの教えを受けられるシャルルへと周りのクラスメートが羨望の視線を向ける中、彼女はそれに気づかず笑顔で僕にお礼の言葉を口にする。


「さて、これで僕が一人でも対抗戦に勝てるって納得してもらったかな?」


 自分が開設させた焼き肉店でお肉をお米の上でバウンドさせながら口を開く。


「まぁ、そうですね。アレス様が勝てない相手がいたら、自分たちが居ても勝てないと思います」


「そうですね」

 

 僕の言葉にクラスメートが頷く。


「納得してもらって良かった……それじゃあ、僕のチームはシャルルとマリア様ね」


 二度目の僕の宣言は誰からも反対されることなく通ったのだった。

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