第41話

 ブレノア教を国教とするトンロ皇国の学生の中でも頭一つ抜けた強さを持ち、神の寵愛を受けるブレノア教の信徒は他の人間よりも優れているという歪んだ思想の教育にどっぷりとつかっている男、オーエンス卿。

 

 彼はその圧倒的な力でトーナメントを順調に駆け上がり、決勝にまで上り詰めてきた。


「くくく……流石に決勝にまでは来るか。だが、所詮学生レベル。その程度で自信を持っているのだとしたらかたわら痛い」


「貴方も十分学生レベルだと思いますが」


「……ッ。ふっ。そうやって煽り、私から冷静さを失わせようとしても無駄であるぞ」


「審判早く始めましょう。時間の無駄です……どうせ自分が勝ちます」


「……ッ!調子に乗るのも大概にッ!!!」


「冷静さは何処に行ったんだ」


「……ッ!!!き、貴様ァ!!!」

 

 二、三言であっさりと冷静さを手放したオーエンス卿の煽り耐性の無さに僕は呆れる。

 まるでどこかの粉バナナ系主人公ではないか。


「……両者、口での応酬はそこまでにするように」


 僕とオーエンス卿のやり取りを側で見ていた審判が口を挟んでくる。


「申し訳ありませんでした」


「……えぇ。それでは学校対抗試合決勝せ」


「……ッ!!!」

 

 僕は試合の開始を知らせる言葉を告げる途中だった審判の元に転移し、その身へと覆いかぶさる。

 衝撃が遅い、シャルルとマリア様の二人にかけていた結界魔法が壊されたことを悟る。

 あの結界を一撃で……ッ!とりあえず初撃は防げたが……ッ!


「シャルルッ!マリア様ッ!結界は壊れたッ!伏せてろッ!!!」

 

 これから学校対抗試合の決勝戦が始まるという大事な場面で。

 ステージ向けて放たれた特大の魔法を前に眉を顰めながら僕も僕で魔法を発動……再び僕らのいるステージに向けて放たれた魔法を打ち消す。


「誰だ?こんな狼藉を働く愚か者は」


 僕は最大限に警戒心を高めながら口を開いた。


「……強いやつも、いるものだな」


「……は?」

 

 僕と同じ次元魔法。

 転移を使ってステージの中心に現れた人物を見て僕は呆然と声を漏らした。

 

 

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